費用・住宅ローン

資金計画を考えよう! 諸費用も忘れずに

住宅購入には多額の費用がかかりますから、資金計画を入念に練る必要があります。
 
住宅購入にいくらかかるのか、住宅購入までにいくら貯めればよいのか、

住宅ローンやその他借り入れはどう考えればよいのか、一つずつ計画が必要です。
 
それにはまず、かかる総コストの把握をしたうえで自己資金と借入れについて考える必要があります。

物件価格以外に「諸費用」も計算しよう
資金計画を立てるうえでは、まず物件価格と自己資金を基に、住宅ローンとして借りるお金を計算することが多いかもしれません。
しかし、住宅を購入するときに支払うお金として、「諸費用」を忘れてはいけません。
 
諸費用とは、物件価格以外にかかってくるコストの総称です。
新築なら物件価格の3~7%、中古では6~10%ほどとされています。
物件の購入や建築のために必要な、各種税金や手数料のことであり、
中古だと仲介手数料が加わる場合が多いので、高めになっています。
 
どこまでを諸費用に含めるのか難しいところですが、引越し代や近所のあいさつ回りのための粗品代、
買い換える家具や電化製品などの代金がかかることもあるでしょう。
これらの費用だけでも、合計で数十万円に達することも少なくありません。
 
以上を踏まえると、物件価格だけを見て「これなら買える!」と早合点するのは危険です。
物件価格の10%ほどは諸費用+αとして必要になると考えた方が無難でしょう。

自己資金と住宅ローンの支払い
住宅購入用の資金は、自己資金と住宅ローンに分けられます。
自己資金は、頭金や前述の諸費用の支払いに充てられることが多いです。
 
頭金の金額は、住宅購入資金の2割程度が目安です。頭金が少なすぎると、あとで住宅ローンの負担が重くなります。
逆に、多すぎた場合、当座の生活資金が苦しくなってしまう可能性があります。
手持ちの資金のうち、どれくらい住宅購入に振り分けられるか前もって検討が必要でしょう。
 
仮に頭金を多めに支払ったとしても、住宅ローンの支払いで家計が「火の車」となる世帯も少なくありません。
会社の倒産やリストラ、減給などの事情によって収入が激減するリスクもつきものです。
あらかじめライフプランを立てて、教育資金や老後資金などが「いつ」「いくら」必要になるかを見積もりましょう。
 
自己資金だけで住宅を購入できればベストですが、実際はほとんどの世帯が住宅ローンを利用することになります。
生活を過度に苦しくするほどの額を借りることは、避けるべきでしょう。

父母・祖父母からの資金援助は期待できるか?
住宅購入資金は自己資金と住宅ローンで賄うとお伝えしましたが、住宅ローン以外にも家族・親戚の資金援助が期待できる場合もあるのではないでしょうか。
もし期待できるのであれば、ぜひ検討したいものです。
 
父母や祖父母からの資金援助の形態には、「贈与」「借入れ」「共有」の3種類があります。
「贈与」とは、親から資金をもらうことです。
年間110万円を超えると贈与税の対象になりますが、住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税特例もありますので、
適用できないかチェックしておきましょう。
 
次の「借入れ」とは、親から資金を借りることです。
借りるだけなので贈与税はかからないのですが、税務署から「贈与したのを偽装しているだけではないか」と疑われてしまうケースもあります。
親族間の取り決めであっても、契約書(借用書)を作成するとともに返済実績を残しておきましょう。
 
「共有」とは、父母や祖父母と自分たちが共同でお金を出し、不動産の共有登記を行うことです。
購入する住宅の名義を共有にすることで、贈与でも借金でもないとアピールするわけです。
この場合は贈与税の支払いや借金返済の義務が生じませんが、
共同保有する父母や祖父母にも税金(不動産取得税や固定資産税)がかかります。
また、保有者が亡くなったあとは住宅を相続する形になることがほとんどだと思いますので、
相続税にも注意が必要です。

年収、ローン…家の購入予算はどう決める?
憧れのマイホーム。
せっかく家を買うなら、自分たちが買える範囲で、
できるだけ高級な家を買いたいと思う人もいるでしょう。
しかし、金融機関が融資してくれるお金には限度があります。
また、多くのお金を借りて家を買えば、返済ができなくなるリスクが高まります。
では、購入に失敗しないよう、リスクを抑えるためにはどうしたら良いのでしょうか。
自分たちに合った適正な価格について考えていきましょう。

月々の返済額の設定について
まず、住宅ローンの返済で失敗しないためには、
月々の返済額を現在の住居費と大きく変わらない金額に設定する必要があります。
基本的に月収は変わらないのですから、他の支出を節約しようとがんばっても、
現住居費のプラス20%程度が上限でしょう。
また、今は共働きで二つの収入源があるとしても、
住宅購入を機に妻が出産をして退職する可能性があるという場合は、
現在の家賃よりも住宅ローンの支払額が少なくなるようにするべきです。
 
月々の返済額を抑えるためには、返済年数を長く設定する必要があります。
一般的な住宅ローンならば、返済期間は最長で35年。返済リスクを抑えるためには、
短期で無理に返そうとせず、長めの返済期間を設定するといいでしょう。
すると、もしも収入が下がっても、毎月の返済が滞るリスクが減らせます。
ただし、返済期間の長さは、住宅ローンを借り入れる年齢を考慮して決める必要があります。
確実に収入が減るであろう、定年退職後まで何年も返済が残っている、
というような状況はできるだけ避けるのがよいでしょう。

年収と融資額、返済比率について
一般的な住宅ローンの融資額は年収の何倍程度が最適なのかも知っておきましょう。
2016年のデータになりますが、住宅金融支援機構の調査情報を紹介します(※)。
 
この調査結果では、土地付き注文住宅を購入する人の融資額は全国平均で、
年収の7倍程度、新築マンションは7倍弱、建売住宅は6.5倍となっています。
中古は5倍超程度とやや下がっています。
また、2016年までの過去10年間で、融資額の年収に対する倍率は、年々上昇しています。
理由としては、物件価格の上昇と金利の低下が考えられます。
低金利の時勢では、融資額を増やしても返済総額が抑えられるので、比較的融資を受けやすいと考えられるのです。
 
また、住宅ローンの返済額を考える上で、収入に対し返済額は何%にするのかという、「返済比率」を考えることも重要です。
フラット35では、年収400万円未満の人は返済比率30%以下の金額までしか借り入れできません。
一方、年収400万円以上であれば返済比率は35%までアップします。
ここから考えると、住宅ローンの返済比率の上限は収入に対して35%程度。
無理しないようにするなら25〜30%が適正だと考えられます。
年収500万円の人が返済比率を30%にすると、年間の返済額は150万円、月々、125,000円になります。
 
年収500万円ですと、月々の手取り収入は30万円ほどになる人が多いと思います(月給のみの場合)。
手取り収入に対する住宅ローンの返済額を考えれば、月々125,000円のローン返済はかなり大きな支出でしょう。
暮らしを切り詰めすぎるといずれ苦しくなってくるので、この場合は毎月の返済額をもっと下げておいた方がいいかと思われます。
このように実際に考えるときには、手取りの収入金額で見ることが必要です。

年収500万円での購入シミュレーション
では、実際に年収500万円の人が、融資を受けて無理のない返済で購入できる物件価格は、
どのくらいになるのでしょうか。シミュレーションしてみましょう。
 
現在の融資金額の平均水準が、年収の約6倍であると考えれば、年収500万円の人が借り入れる融資金額の目安は3,000万円になります。
自己資金として頭金が物件価格の1割と仮定すれば、3,300万円程度の物件を購入できると考えられます。
3,000万円の借入れ条件を金利1.4%、返済期間35年と仮定すると、月々の返済額は90,393円となります。
 
仮に、年収500万円の内訳が月収35万円と年額ボーナス80万円だとすると、諸々差し引かれた毎月の手取り収入は27~28万円程度と考えられます。
手取り収入に対する住居費の割合が、丁度30%くらいになります。
しかし、もう少し毎月の生活費にゆとりを持たせたいところです。
月々の返済比率を下げるためには、ボーナス払いの併用が考えられます。
ただし、ボーナスの支給は業績などに左右されるので、あまり多めの金額設定にはしない方がいいでしょう。
 
また、住宅ローン減税の適用を受ければ、10年間は所得税と住民税から毎年ローン残高の1%が控除されます(残高3,000万円なら30万円)。
さらに頭金をもう少し用意できるのであれば、借入れ額を減らして、毎月の返済額を8万円台に抑えることが可能になります。
 
住宅ローンの返済ができなくなると、最悪の場合、せっかく購入したわが家を任意売却や競売などで手放さざるを得なくなることもあります。
生活環境の大幅な変化、子供の将来にも影響するなど、家を失うリスクはとても大きなものです。
そのような事態に陥らないためにも、住宅ローンは適正な金額を借り入れて、ローンの借り換えや繰上げ返済も考えながら、無理のない返済計画を立てましょう。
 
※出典:住宅金融支援機構ホームページ「2016年度フラット35利用者調査」5-1~5-3〈年収倍率〉

住宅購入時に「頭金」はどのくらい必要か
住宅購入の際には、多くの人が住宅ローン融資を受けることになります。
このとき、自己資金として「頭金」を支払うことも一般的に行われています。
では「頭金」を支払うことにどのような意味があり、どの程度用意すればいいのでしょうか。
ただ何となく必要だと思っている「頭金」について、その効果や金額の目安などを見ていきましょう。

「頭金」とは何か
住宅を購入するときに、なぜ金融機関から住宅ローンの融資を受けるのかというと、
数千万円以上にもなる住宅を現金で購入できる人は非常に限られるからです。
 
基本的に融資を受けるのは住宅の購入価格に対してですが、「頭金」とは、この住宅ローン融資に際して購入価格の一部を現金で支払う、
その手持ち資金のことを言います。
 
頭金はあくまでも物件購入価格の支払いに充当する部分を指しますから、いわゆる「自己資金」とは異なります。
「自己資金」は、購入時に必要な仲介手数料や融資手数料、登記費用といった諸費用を含めた、
自分で準備する現金資金の全部を表しますから、頭金も自己資金の一部ということになります。

「頭金」の効用
では、頭金を準備し支払うことで、購入者はどのような効果が得られるのでしょうか。
 
頭金は住宅購入資金の一部として支払うわけですから、第一に「住宅ローンの借入額を減らす」という直接的な効用があります。
同じ物件を買うにしても、借入額が少なくなれば、毎月の住宅ローンの返済額が下がりますから、返済が楽になります。
見方を変えれば、返済可能な借入れ上限金額に頭金を追加することで、より高額な住宅を買える可能性が出てくるとも言えます。
 
例えば3,000万円の物件を購入するとして物件価格全額の融資を受けた場合、35年ローン、
固定型金利1.5%だとすると(ボーナス返済なし)、返済総額38,579,239円・毎月返済額91,855円になります。
一方、頭金を1割の300万円用意し2,700万円の融資を同じ条件で受けると返済総額34,721,315円・毎月返済額82,670円になります。
実に返済総額で400万円超、月々の返済額で9,000円超の差額が生まれます。
 
また、金融機関にとっては、数千万円以上になる資金を住宅ローンとして面識のない個人に貸すのですから、
返済に関しては常にリスクを負うわけです。
ですから、事前に借り入れる人の身元や収入状況、信用情報などを調べて審査を行い、長期間の返済が可能かを見て融資可否を判断します。
このとき、頭金を支払うことは、融資可否判断や融資条件に有利にはたらくと考えられます。
「頭金が用意できる人」、つまりきちんと収入があった上で貯蓄する能力がある人として、金銭面での信用が得やすくなるのです。
 
実際に頭金を支払うことで、融資条件が優遇されることもあります。
一例として、住宅金融支援機構が主管する「フラット35」では、住宅購入費用の90%以下の金額で融資を受ける人と、
90%超の金額で融資を受ける人では適用金利に差をつけています。
当然90%以下での融資に対する金利の方が低くなります。
 
金融機関ごとの独自の住宅ローンでも同様の対応をしている場合があるので、住宅ローンを組むときは融資条件の詳細を確認するといいでしょう。
 
このように頭金を準備・支払うことは、住宅ローンの返済負担を軽減する効用があると言えます。

頭金なしでの購入について
住宅購入時の「自己資金」として、不動産登記費用や住宅ローン融資手数料、引越し費用など、
諸費用分は必ず用意しなければなりません。
これらの総額は決して低いものではないので、物件購入の頭金にまで手が回らないということもあるでしょう。
さらに、頭金の貯蓄を待っていたら、持ち家を手に入れる時期が大きくずれ込んでしまうことにもなります。
そうなると、高齢になりリタイア後も住宅ローンの返済が残り、
老後の生活資金を圧迫してしまうことになりかねません。
 
ここまで頭金の意味やメリットをお伝えしましたが、頭金の準備は必ずしなければならないものではありません。
当然、金融機関では頭金なしの物件購入価格全額の融資もしてくれます。
ただし、前述のように融資条件が厳しめになるので、そのことを理解して購入物件を決めたり、
融資してくれる金融機関を決めたりする必要が出てきます。
 
頭金は用意できるに越したことはありませんが、収入・貯蓄状況、将来にわたるライフプランを考えながら、
購入時期を判断していけばよいのではないでしょうか。
いずれにしても、きちんとした資金計画・将来設計が大切になります。

予算よりも高い物件は買える?その方法は?

住宅の購入は多くの人にとって、一生に一度のビッグイベントです。結婚や出産に並ぶくらいとも言えるでしょう。
それだけに、できるだけ住宅選びは妥協をしたくないですよね。
限られた予算の中で、自分の好みに合った物件を選びたいこともあるでしょうし、
多少予算オーバーしてでも、本当に気に入った物件であれば、何とかして購入したいと考えることもあります。
 
では、気に入った物件が予算オーバーであった時には、どのように資金を調達すればよいでしょうか。
諦めずに買うための方法を考えてみましょう。

親からの贈与や貸与を検討する
住宅購入時に、親からの資金援助を受ける人は多いです。
しかし、これは親から子供への財産贈与に当たるので、年間110万円を超えると贈与税が課せられます。
親に経済的な余裕があるにも関わらず、自由にお金を贈与できないというのは不便な話。
そこで、「非課税の特例」というものに注目してみましょう。
住宅購入目的に限られますが、両親、祖父母といった直系尊属であれば、贈与については一定の金額が非課税になります。
また長期優良住宅などを購入するのであれば、控除枠を拡大することができます。
住宅購入の売買契約締結日によって適用される金額が変わるので、
詳細は国税庁のホームページなどで確認してください。
 
また、贈与ではなく親からの貸与という形をとれば贈与税はかかりません。
ただし無利子など、ほぼ贈与に近い状態で貸与した場合は贈与税の対象となることもあるので、注意が必要です。
きちんと借用書を作り、少しでも貸出金利を設定しておけば、貸与になるので、贈与税はかかりません。
もちろん住宅購入後には借用書通りにきちんと返済していきましょう。

融資額を増やすための方法
住宅を購入する際、ほとんどの人が住宅ローンを利用しますが、
一人の年収では希望する金額を借りられないこともあります。
そんなとき、融資額を増やす方法の一つに「ペアローン」があります。夫婦や親と子(親子ペアローン)、
それぞれに固定収入があれば、一人で住宅ローンを組むよりも、融資額を増やすことが可能になります。
ペアローンはそれぞれが契約者となります。
 
この他、妻の収入を夫の収入に合算して契約する「収入合算」という方法でも融資額を増やすことが可能です。
収入合算では、親や子、配偶者など、同居の親族であることの他、申込時年齢や合算可能額など、さまざまな適用要件があります。
 
もし、親に固定収入があり、同居する二世帯住宅を建てる場合であれば、
「親子リレー返済」を検討してみるのもいいでしょう。
例えば、「フラット35(最長35年の全期間固定金利の住宅ローン)」の親子リレー返済を利用すれば、借入金額を増やすことが可能です。
この他、年齢に関する制限も緩和されます。
 
ただし、購入する住宅が住宅金融支援機構の技術基準に適合しているなど、申込要件がいくつかあるので、
利用可能かどうかをよく確認しておきましょう。
 
また、長期優良住宅に認定された住宅であれば、「フラット50(最長50年の全期間固定金利の住宅ローン)」の利用も可能です。
申込時の年齢が44歳未満である必要がありますが、親子リレー返済であれば、44歳以上でも申し込みができます。

家計見直しも手段の一つ
住宅ローンの組み方以外にも、現在抱えているローン総額(家計)を見直すことで、
住宅購入費を増やすことができます。
なぜなら、住宅ローンの融資額を決定する際、
金融機関はその人の収入に対する返済負担率を重視するからです。
つまり住宅ローン以外にも車やカードのローンがあり、毎月の返済額が多いと、肝心の住宅ローンで受ける融資金額も減ってしまいます。
複数のローンを継続したまま貯蓄をするよりも、住宅ローン以外のローンの完済に宛ててしまえば、結果的に住宅ローンの融資額を増やせる可能性が高くなります。
 
また、住宅ローン融資に際し、ほとんどの金融機関が団体信用生命保険(以下、団信)の加入を条件にしています。
団信に加入すれば万が一ローン契約者が亡くなるなどした場合に、
住宅ローンの返済は保険会社が行い、その後の契約者の返済義務は免除されます。
この団信は生命保険の代わりにもなるので、
すでに加入している生命保険を見直し、住宅購入資金に回すのも一つの手でしょう。


住宅購入に必要な初期費用とは

住宅の購入に必要なお金は、物件そのものの価格だけではありません。
住宅を買って住み始めるまでには、さまざまな諸費用が発生します。
これら初期にかかるお金を把握して頭金のほかに考えておかないと、予算オーバーという事態になりかねません。
以下の初期費用をきちんと知っておきましょう。

不動産会社に支払う仲介手数料
「仲介手数料」とは、取引態様が「仲介(媒介)」のときに発生する、不動産会社に支払う手数料です。
仲介手数料は法律で料率の上限が決められており、販売価格が400万円を超える物件を購入する場合は、
「物件価格×3%+6万円+消費税」という速算式で算出できます。
3,000万円の物件を購入した場合の仲介手数料は96万円+消費税となります。100万円にもなるので、
「仲介(媒介)」で住宅を購入する際は、必ずこの仲介手数料を初期費用に含めておきましょう。
 
売主から直接購入する場合(取引態様が「売主」の場合)は、仲介手数料は発生しません。
仲介手数料を節約したいのであれば、そういった物件を探してみるのもいいでしょう。

不動産登記費用、税金、保険料
登録免許税
これは、不動産を売買することで発生する、登記簿の所有権の保存や移転に伴う費用です。
購入する土地や建物の評価額によって、税額は変わってきます。
また住宅ローンの融資を受ける際は抵当権の設定登記が必要になるので、その分の登録免許税も課されます。
 
司法書士費用
法務局での登記申請は、大抵は司法書士に依頼することになります。
「司法書士費用」とは司法書士への報酬です。
当然、自分で登記を行えば司法書士費用は発生しませんが、
知識や経験がない人が、自分で円滑に登記を行うのは難しいかもしれません。
司法書士費用の相場は事案や内容により幅がありますが、2万円から15万円ほどです。
 
その他かかる税金
不動産を所有すれば、「固定資産税」や「都市計画税」を支払うことになります。
毎年1月1日時点の所有者に対して課税されます。
大抵、4月~5月頃に管轄自治体から納税通知書が送付され、期限内に支払います。
 
この制度上では、1月2日以降に購入すれば、買主に課税されるのはすべて翌年からになります。
売主側からすると不利益に感じることもありますので、その場合は日割計算にて買主が負担することがあります。
例えば、7月1日に物件を購入する場合、以前の所有者(売主)が支払った都市計画税・固定資産税からの半年分を、買主が支払うということです。
これは、制度上の取り決めとは関係ないので、物件ごとに異なります。
 
また、不動産を購入すると、「不動産取得税」が課されます。
取得した不動産の評価額に一定の税率を乗じた納税額を支払います。
どの程度の税金が発生するのか、あらかじめ確認しておき、
不動産取得税の支払い分を用意しておきましょう。
 
さらに、不動産購入時に取り交わす売買契約書には「印紙税」がかかります。
印紙税は、売買契約書に収入印紙を貼付する方法で納付します。
納税額は、売買契約書に記載された取引金額に応じて決められています。
 
ローン借入時の費用
住宅ローンを組む場合には、融資手数料が必要になります。
金額は、金融機関によって異なるため、借入先への確認が必要です。
 
各種保険費用
住宅ローン融資では、多くの場合、債務者が亡くなった、もしくは働けなくなったなどの理由で返済不能に陥ったときに備えて
「団体信用生命保険」への加入が必須になっています。
保険料の支払いについては、金融機関によって異なります。
一年ごとにまとめて支払っていく場合、金利に含んで毎月支払っていく場合などがありますから、借入先に確認が必要です。
 
また、資産としての家屋を守るために、火災保険・地震保険などの損害保険の加入も必須でしょう。
建物構造や保障範囲によって支払われる保障金額とそれに応じて支払う掛金が違ってきますから、
必要な内容をきちんと検討する必要があります。

引越し・家具購入・リフォーム費用も視野に
物件を購入する場合には、新居への引越し費用や家具・家電の購入費用も考えておく必要があります。
また、中古住宅で、リフォーム・リノベーションがされていない物件を購入する場合には、
リフォーム費用も考えておきましよう。
 
引越しにかかる費用は、荷物の量、引越し時季、依頼する会社によっても変わってきますが、
ある程度は自分で見積もりをして、諸費用に盛り込んでおきましょう。
引越し時季が具体的になったら、複数社に見積もりを依頼して、比較検討した上で引越し会社を選ぶことをおすすめします。
 
家具・家電の購入費や家のリフォーム費用は、必ずしも発生するものではありません。
しかし、新居に住むのであれば、新しい家具や家電、
そして中古住宅でもリフォームしてできるだけきれいな内装にしたいものです。
 
こういった諸費用をすべて足すと、新築住宅を購入する場合の初期費用は、
物件購入価格のおよそ5%~10%は目安として見込んでおく必要があります。
もちろん個々の購入条件、家族構成などによってかなり違いが出てくるので、
できるだけ早い段階から必要な費用項目を把握して、資金準備を進めることをおすすめします。

ローン以外に住まい購入後にかかる費用は

賃貸住宅に住んでいる場合、住居費として毎月の家賃支払いが発生します。
一方、住宅を購入すれば、ローンを払い終わった時点で住居費は発生しなくなる、
そう思っている方もいるかもしれません。
しかし住宅は購入代金を支払い終わったら一切の出費がなくなるわけではないのです。
さらには住宅ローンの返済と並行して、維持費用もかかることを知っておかないと
購入後の返済計画に支障が出ることもあります。
では具体的に住宅購入後、住宅ローンの返済以外にどのような出費があるのでしょうか。

「固定資産税」と「都市計画税」の納税義務
まず不動産を所有すると、「固定資産税」と「都市計画税」の納税義務が発生します。
この2種類の税金は、1月1日時点で固定資産税課税台帳に登録されている納税義務者に対して毎年課税される税金です。
 
課税標準額と呼ばれる固定資産税を算出するための基準額があり、
その1.4%が固定資産税、0.3%が都市計画税はとなっています。
合計で課税標準額の1.7%を毎年支払わなければなりません。
 
固定資産税は、土地・家屋といった固定資産に対して課税される、一般財源に充てられる普通税です。
都市計画税は、都市計画区域内に所在する土地・家屋に対して課税される、特定財源に充てられる目的税です。
 
固定資産税と都市計画税の納付書は、毎年4月〜6月頃に市町村(東京23区は都)から納税者の自宅に送付されます。
一括納付してもいいですし、4回分割納付も可能です。
また新築住宅や長期優良住宅を購入した場合は、一定期間の固定資産税軽減措置があります。

住宅維持のための「修繕積立金」
住宅には、外観や機能を維持するための修繕や改修工事、そしてその費用が必要です。
マンションを購入した場合は修繕積立金として、修繕費を毎月徴収されるケースがほとんどです。
マンションには管理組合があり、管理組合が長期修繕計画を立てて、区分所有者から修繕積立金を集めます。
月々預金・運用したお金で10年や15年に一度の大規模修繕を行います。
修繕積立金は、築年数が新しいマンションであれば金額が比較的安いですが、
築10年後などに行われる最初の大規模修繕後に増額されるケースもあります。
従って、築年数が古い中古マンションでは、修繕積立金の負担が大きくなっていることがあるので、
購入を考える場合は確認するといいでしょう。
 
また、築年数が新しいマンションであっても、規模(住戸数)や建物に含まれる共用施設・設備の度合によって、
修繕積立金額に違いが出てきます。
住戸数が多ければ、貯蓄される総金額が多くなるので、一住戸あたりの負担は減る可能性がありますが、
少戸数のマンションであれば、一住戸あたりの負担が増えてしまうかもしれません。
機械式駐車場や便利な共用施設などがあれば、
その分修繕費用がかさむため、比例して負担額も増える傾向にあります。
 
さらに管理組合の修繕計画の確認も忘れてはいけません。
もし管理組合の運営や計画がずさんで、修繕積立金が正しく集まっていない場合、
大規模修繕が行えず建物の外壁などの塗装剥離や変色などの修復が先延ばしになり、
エレベーターや配管などの劣化部分の補修も放置されるかもしれません。
修繕が適正に行われているかどうかは、マンションの資産価値に大きく影響するので、
必ずしも修繕積立金が安ければいいというわけではありません。
 
一方、一戸建てを購入した場合は、居住者自身で後々の修繕に備えてお金を貯めておく必要があります。
屋根の修理や外壁塗装といった外観のメンテナンスを10年〜20年に一度は行います。
適正な時期にこれら修繕を行わないと、家の老朽化が進み、後にかえって高額なリフォーム費用がかかることになります。
 
また、風呂やキッチンといった水回り設備の交換、床やクロスの張り替え、
家族構成の変化に伴うリフォームやリノベーション、バリアフリー設備の追加など、さまざまな改修費用が発生する可能性があります。
 
以上を踏まえて、およそ10年単位をめどにメンテナンスや修繕の実施を見込んで、毎月の生活費や子供の学費とは別に貯蓄しておきましょう。

「管理費」ほか毎月かかる費用
マンションならではの出費として、管理費や駐車場代が挙げられます。
マンションの管理費は、エントランスやゴミ置き場などの共用部分の設備点検や清掃などをはじめとする管理業務に対する費用です。
管理業務は大抵の場合、管理組合が選定した管理会社に業務委託という形で発注されます。
管理人の派遣を含め、管理費の入金などの金銭管理、修繕計画策定の補助、組合総会開催のサポートなど、
管理業務の一切は管理会社が引き受け、その対価を支払うために管理費が毎月徴収されるわけです。
 
また、車を持っていれば駐車場代も必要です。
一戸建てでは敷地内に駐車スペースを設置することが多いですが、マンションの駐車場利用はあくまでもオプション契約であり、
利用には毎月駐車場代が発生します。
特に十分な台数の平置き駐車場を設けるスペースがない都心部などのマンションは、機械式駐車場を設けていることが多いです。
機械式駐車場は定期的なメンテナンスと鉄部塗装、部品交換が不可欠になります。
駐車場代はその費用などに充当されているのです。
 
このほか、自転車やバイクを置くには駐輪場代がかかりますし、
一階住戸では専用庭使用料がかかることも多いです。
 
このように住宅の購入後にもさまざまな費用が月額・年額で発生します。
住宅購入を考える際には、
これらの維持費や税金の支払いがあることを忘れずに、月額のローン返済額を考え、
無理のない資金計画を立てましょう。

住宅ローンを利用するメリットについて

家を買うにあたっては、住宅ローンを組むのは半ば当然のように思えるのですが、
住宅ローンを組むことにどのようなメリットがあるのでしょうか。
あらためて、住宅ローンを利用することでどのようなメリットがあるのかを確認しておきましょう。

住宅ローンとはそもそも何か
そもそも住宅ローンとはどのようなものでしょうか。もし、この世の中に融資というものがなかったならば、
何を買うにも手持ちのお金がないと買えないことになります。
そうなると、住宅のような高額な商品は、ほとんどの人は長い年月をかけて、
お金をためてからしか買えなくなってしまいます。
住宅を買える人が少ないということは売れないということですから、
住宅の流通量が減り、市場が活性化しません。国の経済にも大きく影響を与えるでしょう。
 
そう考えると住宅ローンは、自分の家を買いたいという消費者の要望と住宅をたくさん売りたいという不動産業界の計画、
経済を活性化させたいという国の方針などをまとめてかなえているのかもしれません。
 
とはいえ、私たち消費者にとっては、やはり手持資金がなくてもマイホームが手に入るということが、住宅ローンが存在する最大の意義でしょう。

住宅ローンを使うことのメリット
では、住宅ローンには、どのようなメリットがあるのでしょうか。
 
メリット1:高額な住宅を購入できる
最大のメリットは前述したように、一括で支払える資金を持ち合わせていない人でも、
一定の収入があれば、年収の何倍にもなる住宅の購入ができるということです。
言い換えれば、資金がたまるのを待たずに、欲しいときに買えるということです。
 
メリット2:団体信用生命保険によるリスク回避
「団体信用生命保険(以下団信)」を利用すれば、住宅ローンの借入名義人が返済不能に陥ったときに、
ローン残債が保険金により支払われます。
大抵は一家の収入を支える夫が借入名義人になっていることが多いですが、
その夫が傷病・死亡といった予期せぬ事態により住宅ローンの支払いが困難になった場合でも、
残された家族はそれ以降のローン返済をすることなく住宅に住み続けることができます。
 
これは、金融機関にとっても融資債権の貸し倒れリスクを回避する手段にもなっています。
金融機関は住宅ローン融資の際に、購入物件を担保にして「抵当権」を設定します。
これにより、返済が滞った場合には最終的に住宅を競売にかけ、残債を回収することができます。
 
しかし、借入名義人が死亡してしまうこともあり得るため、
多くの金融機関では、団信を利用することを融資の条件にしており、それが住宅ローンの特徴にもなっています。
 
メリット3:住宅ローン控除による減税
「住宅ローン控除」とは、自己の居住用の家屋を住宅ローンを利用して取得した場合に、
規定の金額が所得税額から控除(減税)される制度のことです。
正式には「住宅借入金等特別控除」と言います。
 
住宅ローン控除を受けるには、取得した住宅の床面積やローン借入機関の下限など、
さまざまな適用条件が定められており、その全てを満たす必要があります。
 
また、控除を受けるための手続きとして、確定申告が必要になります。
通常、給与所得者は確定申告を行う必要はありませんが、控除を受ける最初の年分だけは例外なく確定申告をしなければなりません。
 
新築・中古、その他諸々の条件によって適用される内容は違ってきますので、詳細は確認してください。
また、そのときどきの税制により規定は変わるので、最新の内容と適用期間を確認するといいでしょう。
 
メリット4:必要な資金を確保できる
住宅ローンを利用して毎月無理のない返済計画を立てられれば、残りの収入金額で生活するとともに、将来必要になる資金を貯蓄することもできます。
持ち家を手に入れた上で、子供の教育や老後に備えるライフプランが立てられるというのは、住宅ローンを利用することでの大きなメリットです。

住宅ローンを使うことのデメリット
当然デメリットについて知っておく必要があります。
 
デメリット1:利息により総返済額が大きくなる
住宅ローンの最大のデメリットは、総返済額が大きくなることです。
融資を受けるということは、当然そこには利息が発生します。
借入金額に利息分がプラスされれば、本来の住宅購入価格より高い金額を支払わなければならないということになります。
 
デメリット2:金利上昇により総返済額が大きくなるケース
「変動型金利」で住宅ローンを契約した場合、市場金利が上昇すると住宅ローン金利の利率も上がりますから、
返済金額が当初の予定より大きくなってしまうというリスクがあります。
低金利状態が長く続けば、固定型金利を選択した場合よりも金利設定が低いので、
返済額を減らせる可能性はありますが、市場動向は専門家にも長期予測はつきませんから、
常に不透明な状態で返済を続けることにはなります。
 
ただし、金利見直しは半年ごとですが、返済額の改定は5年ごとなので、
例え市場金利が上昇しても、すぐに返済額が増額されることはありません。
 
また、増額改定は「前返済額の125%まで」という規定もあるので、突然返済不能に陥ることは回避できます。
 
デメリット3:収入の減少による滞納リスク
住宅ローンは最長35年という長期間の返済になるため、万が一収入が減少してしまった場合のリスクも頭をよぎります。
 
例えば、勤務先の業績が低下し賃金が減額される、あるいはボーナスが支給されない、
ローン借入名義人(主たる収入を得ている人)が事故や病気で普段通りに働けなくなったなどです。
こうなってしまうと家計収支は崩れ、住宅ローンの返済額が捻出できなくなる可能性が出てきます。
 
もしも返済が長く滞ると、金融機関は抵当権を行使して、担保となっている住まいを競売にて処分します。
つまり持ち家が自分の物ではなくなってしまいます。
そうなると、それ以降の生活を立て直すことは容易ではないので、このリスクはデメリットとして挙げられるでしょう。
 
しかし、借入名義人の病気・死亡により返済不能になった場合に備えて、「団体信用生命保険」がありますから、
その点に関しては事前に対策しておくことが可能です。

住宅ローンにはどんな種類がある?

自分に合った住宅ローンを選ぶためには、まずどのような住宅ローンがあるのか基本知識を踏まえる必要があります。
その中から、いくつか見つくろって情報を収集し、直接店舗に足を運んで相談やシミュレーションを実施し、
最終的に最適な住宅ローンを選ぶのです。
 
住宅ローン選びの最初の段階として、住宅ローンを融資する主体別に三つの種類に分けて見ていきましょう。

返済可能額を軸に考える
住宅ローンは、融資する主体によって「民間住宅融資」「公的住宅融資」「協調融資」の3種類があります。
また、金利タイプ(固定/変動)や返済期間、手数料、サービス内容などによって、多彩な商品がそろっています。
 
住宅ローンは商品が多いだけに、自分のニーズに合ったものを選ぶ「目利き力」が求められます。
住宅の購入を検討する前から住宅ローンに詳しい人はあまりいないと思いますから、
まずはインターネットや雑誌、書籍などを通じて情報収集することが必要です。
 
また、自分の貯金額や世帯収入額を踏まえて、どれくらいの値段の家を購入すればどれくらいの金額の住宅ローンになるのか、
見当をつけておくとよいでしょう。
直接銀行や住宅ローン会社などを訪れて、担当者にシミュレーションしてもらってもかまいません。
 
住宅ローン選びのためには、金利や返済計画などを踏まえて「どれくらい借りられるか」よりも
「どれくらいの額なら返済できるか」という軸で考えるとよいです。
最終的に金融機関の融資判断は、この視点になることを知っておきましょう。

民間住宅融資と公的住宅融資とは?
住宅ローンのうち「民間住宅融資」と「公的住宅融資」の違いは、融資する主体のみならず種類の多さにあります。
民間住宅融資の方が、圧倒的に数は多いです。
 
民間住宅融資とは、銀行、信用金庫、労働金庫、住宅ローン専門会社などといった民間機関が用意している住宅ローンです。
「民間住宅融資」とひと口に言っても、一つの金融機関だけでかなり豊富な数の商品があります。
 
たとえば、あるメガバンクの住宅ローンには、一般的なタイプに加えて「WEB申し込み専用のローン」
「住み替えのためのローン」「リフォームのためのローン」があります。
一般的なタイプの中でも、変動型金利・固定型金利の違い、返済方式の違いなど複数種類が用意されています。
 
公的住宅融資とは、公的な機関が主体となっているものです。例えば、会社で財形貯蓄をしている人向けの
「財形住宅融資」や一部の自治体の「自治体融資」があります。
ただし、民間住宅融資に比べれば数は少ないです。

長期固定金利のフラット35とは?
「フラット35」とは、住宅金融支援機構と民間金融機関が連携して行う「協調融資」に当たります。
ただし、場合によって民間住宅融資に分類されることもあります。
 
フラット35は、「フラット」の名の通り、借入時に決まった金利がずっと続く長期固定金利です。
記録的な低金利が続いていることもあって、人気を集めている住宅ローンです。
借りる立場からすると、長期固定金利は返済額が将来にわたって明確なので、ライフプランが立てやすいというメリットもあります。
 
前述の民間住宅融資の中にも、長期固定金利タイプの住宅ローンがないわけではありません。
ただし、基準となる貸出金利が将来的に上昇したとしても、住宅ローンの金利を上げることができないので、
金融機関からは敬遠されがちです。
フラット35は、住宅金融支援機構が金融機関をサポートすることで、長期の固定金利での貸付をしやすくしたものです。
 
長期固定金利以外にも、メリットがあります。保証料や繰り上げ返済の手数料が不要ですし、
物件に対して設計検査、現場検査による技術基準の適合チェックが行われるのです(※)。
裏を返せば、技術基準をクリアしていない住宅には融資をしないという、融資条件の厳しさがあるとも言えますが、
一定の安心感にはつながるかと思います。
 
※各種性能評価などを活用する場合は、申請することで検査を省略できます。
また、検査は融資条件である技術基準への適合可否を見るもので、
住宅の性能や瑕疵がないことを保証するものではありません。

住宅ローンの金利タイプとは

新居を購入するのに、全額自己資金を用意できる人はほとんどいませんので、
多くの人は住宅ローンを利用することになります。
住宅ローンを借り入れると、借入金額(元金)と金利(元金に一定の割合で設定された利息)分を
合わせた金額(総返済額)を返済していくことになります。
金利は、大きく「変動型金利」と「固定型金利」のニ種類に分かれます。
種類があるということは、どれかを選択しなければなりません。
借り入れを申し込む前に、金利の特徴を知って、
自分でどちらの金利にするかを決められるようにしましょう。

「変動型金利」とは
「変動型金利」とは、返済期間中に、市場金利に応じて借入れ時の設定金利から変わるタイプの金利をいいます。
 
銀行など金融機関は、常に一定の金利で貸し付けをしているわけではなく、
そのときの景気などに応じた政策によって金利を決めています。
そのため住宅ローンのように何十年もの期間で借入れをする際には、
借入れ期間中に景気が変動し、当初の金利設定とそのときの実状が合わなくなる可能性があります。
このような市場の動きに合わせて、金利設定が流動的に変わるようにしたのが、この変動型金利タイプです。
 
変動型金利は、半年ごとに見直されることになっています。
ただし、半年ごとに見直される金利に対し、返済額自体の変更は5年ごとに行われます。
また、この金利見直し後の返済額変更には、「前返済額の125%まで」という上限規定があります。

「固定型金利」とは
「固定型金利」とは、借入れ時に設定された利率が、借入れ期間中変わらずに適用される金利タイプです。
市場金利の動向に影響を受けないので、安定的である一方、利率の設定が変動型金利よりも高めになります。
さらに固定型金利は、固定する時期によってニ種類のタイプに分かれます。
 
全期間固定型
全期間固定型とは、借り入れしている全期間にわたって利率が固定される金利のことを言います。
代表的なものに、住宅金融支援機構と民間金融機関が連携して行っている「フラット35」があります。
「フラット35」は、返済期間が最長35年の、全期間固定型金利です。
保証料や繰上げ返済手数料が不安という特徴もあります。
 
固定期間選択型
「固定期間選択型」は、ローン契約時に5年、10年といった固定金利期間を任意に設定し、
固定金利期間が満了すると変動型金利に移行するものです。
ただし、再度固定型金利を選択できることもあるので、各金融機関への確認が必要です。

金利タイプ別比較と選び方
では、どの金利を選択するか、まずはそれぞれのメリット・デメリットを比べてみましょう
 
変動型金利のメリット・デメリット
変動型金利を利用する借り手側のメリットは、まず固定型金利よりも利率の設定が低いということです。
そのため、借入れ時の市場金利が低水準で、将来的にも継続していきそうな予測が立つ場合は、
長期間、固定型金利よりも低金利の状態が続く可能性があります。
また、金利水準が高い状況でも、将来利率が下がることが予想される場合も同様に、メリットと言えます。
 
その逆で、将来、金利の上昇が予想される状況では、返済額が増えていくので、それがデメリットとなります。
このように、返済額が変わる可能性が常にあるので、返済計画が立てにくいというデメリットもあります。
 
固定型金利のメリット・デメリット
固定型金利は、固定期間については総返済額が当初設定から変わらないため、
月々の返済のほか、ボーナス払いや繰上げ返済などを含めた返済計画が立てやすいというメリットがあります。
しかし、トータルで見たときに変動型金利よりも金利が高くなることがデメリットとして挙げられます。
 
では、どちらを選ぶのが適切かを考えましょう。
 
景気の波と金利について
金利は、通常は景気と連動して決定されます。
一般に景気がいいときには、銀行からお金を借りたいと思う人が増えるため金利が高くなり、
景気が悪いときにはその逆なので金利は低くなります。
この景気がいい悪いという波は常に行ったり来たりを繰り返し、
その波は一番短いものだと約3~4年、長いものだと数十年というサイクルで循環すると言われています。
 
住宅ローンの返済期間は、通常20年を超えるような長期のものが多いです。
そこで、その景気の波を予測して、金利の高低の動きから金利タイプを選ぶのがベストですが、
さまざまな情勢・要因が絡む金利の高低を予測することは、経済専門家でも容易ではありません。
つまり、何十年も先の完済までの金利を予測して、有利・不利を判断するのは難しいことなのです。
 
職業から考えてみる
自分の就いている職業から考えてみるのも一つの方法です。
 
例えば、公務員のように景気の波にあまり左右されずに、安定した収入が得られることが予測できるのであれば、
固定型金利の方が返済計画が立てやすいと言えるでしょう。
 
営業成績などによって給与が変動する職種に就いているような場合には、
好不況の波による金利の変動と収入増減の動きが合致するので、変動型金利に対応できると言えるかもしれません。
 
家族構成から考えてみる
次に、家族構成から考えてみる方法です。
 
子供の教育環境を優先する場合には、当然、教育費の割合は大きくなります。
進学の道筋とそのための塾や習い事をどうするのか、またその費用についてのプランも練る必要があります。
その場合は、収支計画の立てやすい固定型金利の方が向いていると考えられます。

住宅ローンの返済方法について

住宅ローンで同じ金額を借り入れても、返済方法によって総返済額や毎月の返済負担が異なることはご存知でしょうか。
住宅ローンの返済方法には二つの種類があります。それぞれの特徴を知って、より適した方を選べるようにしましょう。

二種類の返済方法とは
まずは、二種類の返済方法について具体的に見ていきましょう。
 
元利均等返済
一つ目は、「元利均等返済」と呼ばれる方法です。「元」とは元金のことで、借り入れる金額のことを言います。
「利」とは利息のことで、借入れ資金に対して支払う、いわば「使用料」です。
つまり、元利均等返済というのは、元金と利息を合わせた月々の返済額を一定にする方法です。
 
元金均等返済
もう一つは、「元金均等返済」と呼ばれる方法です。元金均等返済は、毎月返済する元金を一定にするものです。
 
では、この二つの方法の違いは何なのでしょうか。まず、利息というのは元金に対して掛けられます。
これを頭に入れて、それぞれの返済方法を見ていきましょう。
まず「元利均等返済」は、毎月の返済額は常に同じですが、元金と利息分の割合が、返済が進むにつれて変わっていきます。
当初は利息の割合が大きく、毎月返済をしていくほどに元金の割合が大きくなります。
 
次に「元金均等返済」です。
こちらは、毎月返済する元金は一定なのですから、返済が進むにつれて、まだ返していない残りの元金が同じ金額分減っていくことになります。
そうすると、元金に掛かる利息も減っていくので、支払い回を重ねるごとに月の返済額も減っていきます。

それぞれのメリットとデメリット
では二つの方法には、どのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。
 
元利均等返済のメリット・デメリット
元利均等返済は前述のように毎月の支払い額が一定なので、家計収支が明確になり、返済プランが立てやすいというメリットがあります。
 
デメリットは、返済当初は利息の割合が多いので元金の減り方が遅く、そのため返済期間が同じ場合には、
元金均等返済よりも返済総額が大きくなるということが挙げられます。
ということは、金融機関は返済可能額で融資金額を判断するので、借入金額そのものが少なくなるというデメリットもあります。
 
元金均等返済のメリット・デメリット
元金均等返済は、返済回数が進むごとに元金とともに利息も減っていくので、元利均等返済よりも返済総額が少なくなるというメリットがあります。
 
一方、借入れ当初は毎月の返済額が大きくなるので、初期費用などの支払いがかさむ時期に返済負担が重くなるというデメリットがあります。

有利に返済をする方法
返済総額だけを考えれば、元金均等返済の方が有利に見えます。
しかし、家族構成や将来のライフプランによっては、次のような検討をした方が良いかもしれません。
 
子供の有無や現在の年齢から考える
住宅の購入を検討している人に多いのが、「現在は夫婦で賃貸だが、子供が生まれるから」という動機ではないでしょうか。
 
例えば、現在共働きの夫婦の場合、頭金がそろった頃に子供をつくって、
妻はしばらくは子育てに専念するというプランが考えられます。
この場合、当初の支払いが大変な元金均等返済を組めるかは、夫の収入次第ということになってしまいますので、
毎月の支払い額が一定の元利均等返済を選択しておく方が無難と言えます。
 
しかし、夫の収入で充分に支払いができるのであれば、高校進学・大学進学時など教育費などの支払いが増える時期に、
資金に余裕ができる元金均等返済の方が有利と言えます。
同じ考え方で、「子供が独立したら今の家を売却して夫婦二人の住まいに住み替えよう」という、
将来の資金を確保したい計画を立てる場合も、元金均等返済の方が有利になるでしょう。
 
繰上げ返済を考える
住宅ローンの支払いは、借入れ額に対し、返済期間と金利を計算して月々の返済額が決められます。
しかし、毎月の貯蓄がうまくいったとか、臨時の収入があったなど、返済期間中に資金にゆとりができることがあります。
その場合は、「繰上げ返済」を考えてみるのもいいでしょう。
繰上げ返済とは、本来の返済設定とは別に任意の時期に任意の金額を支払い、元金を減らす返済方法のことです。
「元金が減る=利息も減る」ため、毎月の返済額を減らすことや返済期間を短縮することが可能です。
 
例えば、ボーナスが業績連動になっている職種の場合、好況時の支給額が多いときにやりくりをして繰上げ返済に充てれば、
元金を減らすことができます。
 
また、子育て中だった妻が、子供の成長を見計らって再度働き始めた場合なども、その分の収入を繰上げ返済に充てることができます。
このように、家計・資金の状況に応じて繰上げ返済をすれば、借入れ当初の設定より有利に返済を進めていくことができるでしょう。

住宅ローンの返済期間はどう考える
住宅ローンを何年で返済すればよいのか、についてはさまざまな考え方があります。
住宅ローン自体は借金で、借り入れ元本に対して利息がかかってくるものなので、
完済時期が早い方がいいのは基本的な考え方といえます。
とはいえ、20年以上の長期にわたって、家計を圧迫しながら返済を続けるのは困難です。
そうならないためにも、ここでは住宅ローンの返済期間について考えてみたいと思います。

上限35年で組めばよいのか
一般的に、住宅ローンの返済期間の上限は35年が最も多いでしょう。
これは正しいのですが、だからと言って、「住宅ローンは35年で組むもの」と思い込んでいませんか?
 あくまでも35年まで設定できるのであって、それ以内ならば何年で返済をしようが任意で決められるのです。
 
では、なぜ簡単に「35年」に決めるべきではないのでしょうか。
まず、返済期間が長いほど月々の返済額は少なくなるので、毎月の負担はラクになります。
しかし、このような考え方のもとに、延ばせられるならできるだけ長い方がよいとするのは、次のようなデメリットを伴うことを知っておきましょう。
 
まず最大のデメリットは、総返済額が大きくなるということです。住宅ローンの利息は、返済すべき元金にかかってきます。
つまり、返済が進んで元金が減っていけば、かかる利息も少なくなっていきます。
ですから、例えば同じ3,000万円を借り入れたとして、20年と35年の返済期間を見た場合(元利均等返済でボーナス払いなし、金利はどちらも1.3%と仮定)、
20年では返済月額142,021円・総返済額34,084,966円となり、35年では88,945円と37,356,755円になります。35年では総返済額が350万円も多くなっています。
実際には、返済期間が長くなれば利率も上がるので、これ以上の差が出ますし、月額ももう少し上がります。

返済期間と毎月の返済額を考える
次に返済期間と毎月の返済額について考えます。
前段の試算をもう一度使い、今度は金利の違いを付けてみましょう。
3,000万円の借り入れで、返済期間20年の方は金利1.3%として、35年では金利1.4%とします(その他条件は前記と同じ)。
そうすると、20年の返済月額は142,021円になり、35年は90,393円になります。
差額は5万円超です。35年については、毎月の返済額が少ない分総返済額が増えてしまうことはお伝えしました。
では20年の方はどうでしょうか。返済期間が15年短く、早く完済できて総返済額も抑えられる分、毎月の負担が大きいですね。
 
これは、実は金融機関の融資条件の一つである「返済負担率」に影響してきます。年収に占める返済額の割合です。
返済負担率が高過ぎると、家計収支のバランスが崩れ、返済滞納や返済不能が起きる可能性が出てきます。
ですから、金融機関は一定の基準として「返済負担率」を設定し、
これを防いでいるのです。
つまり、返済期間を短くし過ぎても返済月額が家計を圧迫してしまうまでになると、その条件では借りられないということになります。

重要なのはライフプラン
では、返済期間はどのように決めればいいのでしょうか。
住宅ローンの支払いは前述した通り、数十年という長期にわたって続いていきます。
その間には、子供が生まれて家族が増える、子供が成長とともに進学していく、車などの大きな買い物がある、
家の修繕や改築がある、子供が結婚するなど、家庭内でのイベントがいろいろと考えられると思います。
そしてそれらには、大きな資金が必要になります。
 
したがって、住宅ローンの返済期間を決めるには、これらイベントを踏まえた収支計画、いわゆる「ライフプラン」を立てることが大切です。
さらに、借入時の年齢と完済時の年齢も重要です。何歳で借りるかで、何年借りられるかが変わってきます。
会社員の場合、定年の60歳までに完済したいとなると、35年の借入期間が組めるのは、25歳までとなってしまいます。
しかし、退職金というまとまった資金が見込めるのなら、30歳で65歳まで返済期間があったとしても大丈夫でしょう。
また、35年で組んでも、途中でやりくりをうまくして、繰上げ返済により返済期間を短くするという方法もあります。

いずれにしても最終的には、各自のライフプランと年齢などで判断することになります。
 
返済計画やライフプランの策定に迷うことがある場合には、
金融機関やファイナンシャルプランナーといった専門家に相談するという手段もあります、
いずれにしても、自分に合った適切なプランを立てる必要があるということを知っておきましょう。

住宅ローンの審査基準ってどういうもの?
自己資金だけで何千万円ものマイホームを買える人はほとんどいないのが現実。
多くの人が住宅ローンを利用してマイホーム購入します。
ところが、住宅ローンには「審査」があり、これに通らなければ融資は受けられません。
せっかく新居の購入を計画しても、住宅ローンの審査に落ちたから諦める……などという悲しい結末は避けたいものです。
そうならないように、審査基準や注意点などを確認して、滞りなく住宅ローンが利用できるように備えておきましょう。

審査が通りやすい人とは
金融機関によって、住宅ローン審査の細かな部分の基準は違いますが、必ず入る項目がいくつもあります。
これら項目は、金融機関側が重要だと捉えているものだと考えられます。
まずどの金融機関でも特に重要視されるのが、融資後の「返済能力」です。
個人の収入や仕事、勤務形態が主なチェックポイントです。
各金融機関が定める最低年収のボーダーラインに達しないくらい低収入の人は、その時点で審査から落ちてしまいます。
 
収入に対する返済額の割合を表す「返済負担率」も重要視されます。
返済負担率が大きくなると、「家計を圧迫して返済できなくなるリスクがある」と判断されるので、
それを超えないように設定すべきでしょう。
金融機関側が審査基準と考えている返済負担率はおおむね35%程度です。
一年に返済していく額は「年間収入の35%」をめどにし、住宅ローンの返済計画を立てるようにしましょう。
 
また、就業状況も重視されるポイントです。経営基盤が確かな大企業勤務、実績が安定している優良企業勤務、
公務員など、将来にわたり収入に安定性があると判断されると通過率は高めです。
一方、一般的な年収より高めでも、勤務形態が個人経営や自由業など収入に波がありそうな場合は、通過しにくい傾向があります。
 
住宅ローンは長い年月をかけて返済するものなので、年齢や健康状態も大事です。
例えば、現在20代の若い世代なら、35年の返済計画を立てても完済するのは仕事をリタイアする前でしょう。
しかし、30代後半を過ぎると、完済時に70歳を超えてきます。
会社勤めの場合、定年退職前の在職中に完済することができないので、それ以後の返済はどうなるか、という点が懸念されます。
つまり、返済期間設定と完済時の年齢によっては、審査通過が難しい場合があります。
 
また、「団体信用生命保険(団信)」への加入が条件になっている住宅ローンなら、健康状態も重視されます。
例え年齢が若くても、健康状態が良好でないと団信への加入ができず、結果それを条件としている住宅ローンは利用できない、ということになります。
ここまでをおおむねまとめると、住宅ローンは、「安定した収入の中から一定割合を返済額として確保できて若くて健康な人」が有利と言えます。

「物件の担保価値」も重要な審査基準
住宅ローンは、購入する不動産を担保にしてお金を借りるので、担保にしようとしている物件の価値も審査の通過に影響してきます。
住宅ローンは返済期間が長くなるため、途中で返済が滞る可能性があります。
滞納が続き、返済不能になったときには、債権者である金融機関は担保となっている物件を売却することで債権回収を図ります。
 
そのため、売れにくいと考えられる不動産(一般的に需要がなさそうな物件)は担保価値が低いとみられ、審査に通過しにくいかもしれません。
仮に、審査に通っても希望よりも低めの借入金額となるケースもあります。
担保価値が低いと判断されるポイントは、金融機関によって異なります。
一概に言えませんが、次のような物件への融資には難色を示される可能性があります。
 
・狭小住宅
・不整形地
・行き止まり道路に面している
・傾斜地
・市街化調整区域

 
住宅ローンでは、収入面や返済能力を重視されるイメージが強いですが、
実は物件の担保価値も審査基準の一つ。
特殊な不動産を購入するときには、融資が難しくなる可能性を踏まえて、
慎重に考えた方がいいかもしれません。

他の借入れ状況や過去の履歴も影響大
車や趣味のものなど、高額な買い物でカードローンなどを抱えている場合も、審査に落ちる要因となります。
「毎月いくら返済しているか」がチェックされ、その額によっては返済負担率の基準をクリアできなくなってしまうからです。
つまり、月収が高い人であっても他の返済額が大きければ、新たに借り入れる住宅ローンの返済に回せる金額は限定されてしまいます。
金融機関側としては滞納のリスクは事前に回避するので、他の借入額が多ければ多いほど審査には通りにくくなります。
 
それが消費者金融からの借入れだとさらに審査が厳しめになります。
完済していても過去に消費者金融から借り入れたことがあれば、「信用情報」に履歴が残っています。
そのことで審査に通らないということは考えにくいですが、状況を確認されることはあるかもしれません。
 
これが「返済の滞納をしたことがある」「自己破産をした過去がある」という場合は、更に厳しくなるでしょう。
滞納の背景までは金融機関では把握しないので、
「うっかり払い忘れていた」というケースでも「滞納した」と考えられてしまいます。
 
税金の支払いも審査に影響します。収入があるのにあえて税金を払わない人、
税金を複数滞納している人など、払うべきものを払っていない状況では「責任感と信用性に欠ける」と判断され、
審査に通りにくくなるのは当然のことです。

住宅ローンのボーナス返済とは

住宅ローンを組むには、確実に返済ができる計画を立てることが必要です。
基本的には月々の返済額がベースとなって、借入金額や期間を考えていきますが、
収入の中でボーナス(賞与)がある人は、年2回の「ボーナス返済」を組み入れることが可能です。
では、ボーナス返済とはどのようなもので、どう考えればいいかを見ていきましょう。

ボーナス返済とは
公務員や一般企業に勤務している人は。毎月の給料の他に年2回のボーナス(賞与)が支給される場合が多いと思います。
住宅ローンでは、このような給与所得者の状況に合わせて、ボーナス支給月に増額返済ができる「ボーナス返済」制度を設けています。

ボーナス返済のメリット・デメリット
ボーナス返済について正しい知識を身につけ、上手に利用することができれば、ボーナス返済は心強い味方となってくれます。
それでは、ボーナス返済を利用する場合のメリットやデメリットについて詳しく見ていきましょう。
 
メリット1:毎月の返済額を抑える
まず一つめのメリットとして、ボーナス返済を利用すれば毎月の返済額を抑えることが可能です。
例えば、借入金額:3,000万円、金利:1.3%(全期間固定型・元利均等法式)、返済期間:35年、という条件のローンを組むとします。
全額を月額設定だけで返済する場合と、3,000万円のうち350万円をボーナス返済分にして
年2回ずつ月額に加算して支払っていく場合とで見ると、それぞれの返済額は以下のようになります。
 
〈毎月返済のみの場合〉
・毎月返済額:88,945円
・年間返済額:1,067,340円
・返済総額:37,356,755円
 
〈毎月+ボーナス返済(年2回)の場合〉
・毎月返済額:78,568円
・ボーナス返済額:62,394円(×2回)
・年間返済額:1,067,604円
・返済総額:37,366,061円

 
このように、ボーナス返済を併用すると、この借入れ条件の下では毎月の返済額が1万円以上低くなります。
 
メリット2:返済期間短縮・総返済額減額
二つ目のメリットを見ていきましょう。毎月の返済額は減らす必要がないという場合は、返済期間を短くすることができます。
さらに、借入(返済)期間が短くなるということは、その分の金利負担が減るので、返済総額も減額できるというメリットがあるのです。
では具体例で確認しましょう。借入れ条件は前記と同じ、
 
借入金額:3,000万円・金利:1.3%(全期間固定型・元利均等法式)
 
この条件で毎月返済額をほぼ同じ設定にしたときの、ボーナス返済有無での違いは以下の通りです。
 
〈毎月返済のみの場合〉
・毎月返済額:88,945円
・年間返済額:1,067,340円
・返済年数:35年
・返済総額:37,356,755円
 
〈毎月+ボーナス返済(年2回)の場合〉
・毎月返済額:88,935円
・ボーナス返済額:70,633円(年2回)
・年間返済額:1,208,486円
・返済年数:30年
・返済総額:36,254,681円

 
二つを比べると、毎月返済額はほぼ同じですが、ボーナス返済を併用すると返済年数が5年短縮されて、
返済総額が100万円以上減額されているのがわかります。
当然ボーナス返済月がある分、年間の返済額は大きくなりますが、
確実にボーナス支給が見込める勤務先ならば問題ないでしょう。
 
デメリット
デメリットについても認識しておきましょう。「リスク」と言った方がいいかもしれません。
ボーナス返済というからには、ボーナスがしっかりと支給されることが前提となっています。
しかし、勤務先の業績によっては見込んでいた金額が支給されない、
あるいは支給そのものがなくなってしまうということも考えられます。
これがボーナス返済を併用する際の最大のリスクです。
 
しかし、前述のようなメリットがあるのも事実ですから、ボーナス返済の金額設定を無理のないようにする、
または、少しずつ余剰金を確保しておいて、
万が一ボーナス支給額が足りなかったときに備えるなどの回避策を講じて、うまく利用することをおすすめします。
ボーナスを頼りにし切った無理な返済を考えるのではなく、
今後のライフプランとよく照らし合わせた上で、上手なボーナス返済を考えることが大切です。

ボーナス返済が難しくなってしまったら
借り入れした当初は万全の体制だったとしても、
年月が経過する中で状況が変わり、返済が難しくなってしまうことがあります。
例えば、けがや病気などの不測の事態や転職による収入状況の変化など、いろいろなケースが考えられます。
 
そんなときには、借入先の金融機関に返済プラン(条件)の見直しを相談することが可能です。
金融機関としても返済がストップしては困りますし、状況に応じて負担軽減できるようなプランを提案してくれます。
もし返済が難しくなりそうな事態に見舞われたなら、早めに金融機関に相談しましょう。
 
また、ローンを借り換えることで返済条件を変えてしまうということもできます。
これは、「新しいローンを契約して、今借りているローンを全て返済してしまい、
今後は新しいローンだけを返済する」という方法です。
 
借り換えによってまったく新しいローンを借りることになるため、金利などの根本的な条件も変わることになります。
ボーナス返済の有無やトラブル発生時に限らず、より低金利な融資条件を見つけて借り換えを行うことは、
返済負担を軽減させる一般的な手段となっています。

住宅ローンの申込みから融資実行までの流れ

住宅ローンは、申し込みをしてすぐにお金が借りられるような簡単なものではありません。
住宅ローン特有の手順や審査があります。実際に住まいを買うときにスムーズに進められるよう、
住宅ローンを借り入れるための流れを理解しておきましょう。

「事前審査」はなぜするのか
一般的にローンを借り入れるには、金融機関に申し込みをし、審査を受け、審査が通れば融資が行われます。
大きな流れで見れば、住宅ローンも同じです。
では、住宅ローンの特徴とはどういうものなのか、具体的に見ていきましょう。
 
住宅ローンは、通常は「借入額の返済ができなくなった場合には、
担保である住宅を売却してローンの残債支払いに充てる」いう権利を設定することで、
金融機関がお金を貸してくれるものです。この金融機関側の権利が「抵当権」です。
 
抵当権を設定するためには、その不動産を所有していることが必要になります。
つまり、売買契約が完了していないと住宅ローンの申し込みができないということです。
しかしそれでは、もしも売買契約後に申し込んだ住宅ローンが借りられないということになったら、
せっかく購入を決めた住まいが買えなくなる可能性が発生してしまいます。
 
そこで、そのような事態を未然に防ぐために、住宅ローンでは多くの場合、事前審査という手順を踏みます。
この事前審査によって、あらかじめ本審査に通りそうかを金融機関側が判断して、
融資実行まで円滑に進むようにしているのです。
 
事前審査は、当然本審査よりも簡易的な内容になります。提出する書類も多くはありませんが、
本人を確認できる資料、収入を確認できる源泉徴収票、購入物件の確認資料などは必要になります。
金融機関によって違いがあるため、金融機関または物件の販売担当者に確認しましょう。
事前審査の期間は短く、3~4日程度で金融機関から返答がもらえます。
事前審査に通れば、購入物件の売買契約を締結して、正式な住宅ローンの借入れ申込みから、本審査を受けることになります。

「本審査」の主な審査項目
住宅ローンを正式に申し込むと、金融機関では本審査を開始します。
本審査では、融資金額をきちんと返済できるのかを重視し、融資可否を判断します。具体的には次のような項目をチェックします。
 
返済負担率
「返済負担率」とは、収入に対する返済金額の割合です。
住宅ローンは、最長で35年の期間をかけて毎月返済をしていくことになります。
それだけの長期間の借り入れになるので、途中で返済不能に陥らないように、
収入に比して返済額が過大すぎないかをチェックされます。
 
勤務先、職種、雇用形態
勤務先はどこで、職種は何か。また、正社員、契約社員などの雇用形態をチェックします。
事前審査でも一旦確認しますが、本審査ではきちんと本人が勤務先に在籍しているかなどを提出書類と突き合わせてチェックをします。
融資に際して、申請通りに収入の基盤がきちんとあるのかは最も重要な事項です。
従って、勤続年数も確認項目の一つになります。
 
他の借入
クレジットカードの利用状況や自動車ローンなど他の借り入れ状況が調査されます。
他のローン返済がある場合には、住宅ローンの返済が合わせてできるのか、といった点で不安が残ります。
金融機関は信用情報というものを用いて、債務者にどのような借入れがあるのかをチェックすることが可能になっています。
 
万が一、他の債務に滞納が生じているとか、債務整理をしているような場合には、
信用情報にその旨の記載がされているので、金融機関としては融資見送りという判断をすることがあります。
 
健康状態
多くの金融機関では、住宅ローン融資に際して「団体信用生命保険」(以下団信)への加入を条件としているため、
団信が利用できる健康状態かどうかが重要な審査項目となります。
団信とは、住宅ローン債務者が返済が難しくなるような健康状態に陥った(または死亡した)場合、
住宅ローンの残債が保険会社により弁済される保証制度のことです。
例外もありますが、事前審査の段階で健康状態に問題がないと判定され、
その後も大きな変化がなければ、一週間程度で本審査もクリアとなります。
万が一、長期のローン返済が難しい健康状態と判断され、団信への加入ができない場合には、
加入を条件としている住宅ローンでは融資は見送られることになります。

本審査完了後の手続き
本審査に通ると、正式に金融機関と住宅ローン契約(金銭消費賃借契約)を取り交わすこととなります。
この時点で最終的な金利が確定し、改めて融資条件を確認します。また、融資実行の日取りも決まります。
 
融資実行は、金融機関が売主の預金口座に売買代金の残高を振り込むことで行います。
融資実行の日には、合わせて物件の引き渡しも行います。
登記手続きも必要になるので、売主、買主、金融機関担当者、物件販売担当者、
司法書士といった関係者全員が予定を合わせて集まることになります。

返済で失敗しない適正な住宅ローンの組み方

一生で一番高額な買い物になるとも言われるマイホーム。
マイホームの購入ではほとんどの人が住宅ローンの融資を受けるでしょう。
数千万円以上にもなる買い物ですから、その返済計画は綿密に立てなくてはいけません。
しかし、つい気分が高揚し、無謀な返済計画を立ててしまうことも起こり得ます。
そこで住宅ローン返済の失敗例から、住宅ローンを計画通りに返済していくためにはどうしたらいいかを探ってみましょう。

住宅ローン返済における失敗例とは
住宅ローンを組んだものの、残念ながら毎月の返済ができなくなってしまう人もいます。
まずはその失敗例を見ていきましょう。
 
失敗例1 短期間で返済しようと毎月の返済額を増やしてしまった
住宅ローンの融資を受けるときは、返済期間を設定します。
返済期間を短くすれば支払う金利の総額が少なくなるため、
35年よりも30年、30年よりも25年とできるだけ短い年数で完済しようと考える人は多いです。
その考えは決して間違っていません。
しかし、返済期間を短くすれば、毎月の返済額が増えます。
結果、毎月の返済額が増えすぎたことにより、月収の中ではやりくりができずに返済し切れなくなってしまうケースが出てくるのです。
 
失敗例2 ボーナス返済を利用していたが、業績悪化でボーナスが出なかった
住宅ローン返済のオプションで、ボーナス払いの設定も可能です。
毎月の給料からの返済だけではなく、夏冬のボーナスから返済をすることで、
返済期間を短くでき、月々の返済額も抑えられまれます。
しかし、ボーナスというのは必ず出るものではなく、会社の業績次第で出ないことも起こり得ます。
実際にボーナスでの返済を見込んでいたのに、急に会社の業績が悪化し、
ボーナスの支給がなくなってしまったという事例は少なくありません。
結果的に、ボーナス返済月に返済資金をかき集めることになり、資金計画に大幅な変更が生じてしまいます。
 
失敗例3 夫婦の合算収入でローンを組んだが妻の収入がなくなった
住宅ローンを組む際、夫と妻の収入を合わせて「収入合算」にすれば融資額を増やせます。
しかし、子供が生まれて妻が休職・退職しなければならなくなったなどの事態は、起こらないわけではありません。
その場合、夫の収入だけで返済を続けることは困難になってしまいます。
もしも妻が一定期間働けずに収入が減ったとしても、何とかやり繰りできる返済額を設定しておく必要があるでしょう。

「繰上げ返済」の利用で回避する方法
上記の失敗例を踏まえて、返済が滞るような事態を未然に防ぐための方法を見ていきましょう。
 
まず、住宅ローンの返済期間を長くすることで毎月の負担額が抑えられます。
しかし、返済期間を長くすると金利支払い分が増えるので、返済総額がより高額になるというデメリットがあります。
そこで「繰上げ返済」を積極的に利用するという方法に注目しましょう。
 
「繰上げ返済」とは、あらかじめ取り決めた毎月あるいはボーナス返済とは別に、
借入者の任意のタイミングで追加的に返済できる制度です。
毎月の返済額を低めに設定しておいて、家計に余裕を持たせ、その分貯蓄に励みます。
例えば、一定期間返済用にためた金額を都合がいい時期にまとめて返済できるわけです。
その効果として、繰上げ返済は直接融資の元本部分に充当されるので、返済期間の短縮や毎月返済額の減少を行えます。
もちろん支出がかさみ、繰上げ返済が難しいときは無理に行う必要はありません。
家計の状態に合わせて臨機応変に返済することが可能です。
 
住宅ローンの返済期間を最長の35年に設定しておいて、予測不能な将来に備えつつ、貯蓄に励んだ分だけ繰上げ返済で負担を減らしていくというのは、
無理な返済設定で滞納を引き起こさないための一つの回避方法でしょう。

新規購入の場合は必ず現家賃との比較を
特に賃貸居住から初めて持ち家を購入する場合に、無理のない返済計画を立てるポイントとして、
住宅ローンの返済額が現在の家賃と比べてどの程度変わるかをきちんと見る必要があります。
 
月々10万円の家賃を支払っている人を例に挙げてみましょう。
 
〈3,000万円の住宅を購入した場合〉
・借入金額:3,000万円
・返済期間:35年
・ボーナス払い:なし
・金利:固定1.5%
・月々の返済額:91,855円

 
上記の試算では、月々の返済額は現在の家賃である10万円以下に抑えられます。
つまり、住宅ローンの返済リスクも低いと言えます。
 
賃貸住宅で生活している場合は、月々の家賃の支払いとは別に将来の住宅購入に備えた貯金を行っている人も多いはずです。
住宅購入後は、その貯金分が減るため、住宅にかける毎月の支出がむしろ減る可能性が高くなります。
住宅を購入した後には、税金や修繕費などの支出はありますが、きちんと見込んで計画を立てることで、予算オーバーは回避できるでしょう。
 
このように、現家賃を基準に返済月額を考えることで、自ずと借入金額の上限がわかりますから、
自分の返済能力を超えた高額物件に手を出してしまうようなことも防げるでしょう。
ローンの借入れに際しては、返済額をややゆとりのあるところで調整することをおすすめします。
その上で、繰上げ返済などを加えて、ローン滞納によりせっかく購入した我が家を手放すというリスクを避けながら、
できるだけ返済負担を減らす方法を探っていきましょう。


「フラット35」について
長期固定型金利の住宅ローンとして知られる「フラット35」。でも具体的にどういうものなのかは、意外と知らないものです。
購入時の住宅ローンの選択肢として、基本的な内容を知っておきましょう。

「フラット35」とは
「フラット35」とは、住宅金融支援機構と民間金融機関が連携して融資を行う住宅ローンです。
住宅金融支援機構は、住宅金融市場での安定した資金供給を支援することを目的とした独立行政法人で、国土交通省と財務省が管轄しています。
 
本機構の主な取り組みの一つに、この「フラット35」があります。
フラット35は、都市銀行、地方銀行をはじめ信用金庫、保険会社などさまざまな金融機関が全国で幅広く扱っています。
 
通常のフラット35は「買取型」と言われるもので、借入れ側が金融機関から住宅ローン融資を受けた後、住宅金融支援機構が金融機関から、
その住宅ローンの債権を買い取ります。
本機構は、買い取った住宅ローン債権を証券化して投資家に売ります。
これにより、長期の資金調達を行うという仕組みです。
 
借りやすい水準の利率を固定で、35年もの長期ローンを組むというのは、融資する側からするとかなりのリスクを伴います。
ですから、一般的には金利の設定が高めになったり、審査が厳しくなったりして借り入れのハードルが上がるものです。
しかし、フラット35は独自の仕組みにより、多くの人が融資を受けやすい金融商品となっているのです。

「買取型」と「保証型」について
フラット35には、仕組みの違いにより二つのタイプがあります。一つはすでに説明した「買取型」。
もう一つは「保証型」というものです。
 
「フラット35(買取型)」は、住宅購入者に住宅ローンを融資した金融機関から、その住宅ローン債権を住宅金融支援機構が買い取りますので、
担保となる不動産に設定する抵当権については本機構が第一抵当権者になります。
 
また買取型では、住宅金融支援機構の団体信用生命保険(機構団信)に加入ができます。
債権者は本機構ですが、住宅ローン融資・返済に関わる実務については全て受託している金融機関が行います。
単に「フラット35」と言えば、この「買取型」を指します。
 
一方、「フラット35(保証型)」は、住宅金融支援機構が「住宅融資保険」を付けることで受託金融機関に対し、
債務者のローン返済と、機関投資家への元利金払いを保証しています。
そのため、この保証を支えに受託金融機関側の柔軟な融資設計を可能にしています。
買取型と違い金融機関が指定する団体信用生命保険に加入することになります。担保不動産の抵当権者は、金融機関になります。
 
ただし、実状として提供されているのは「買取型」がほとんどであり、「保証型」はごく限られた金融機関でしか利用できません。

メリットと注意点
フラット35は、最長35年の固定金利ローンとなるため、返済計画が立てやすいというのが一番のメリットでしょう。
市場の金利上昇時のリスクがなく保証人も不要です。
繰上げ返済をする場合(100万円以上から)の手数料も不要となります。
 
一方注意点としては、各金融機関によって金利や手数料が異なるため、どこから融資を受けるのが有利か、
自分で比較検討して判断をしなければなりません。
また断熱性や耐久性といった、住宅金融支援機構が独自に定めた技術基準に適合した住宅でなければ、
利用できないという点にも注意が必要です。

住宅ローン返済を楽にする「繰上げ返済」

住宅ローンの返済期間は長く、最長で35年にもなります。
何千万円もの借入額を毎月返済していくのですから、返済期間はどうしても長くなります。
しかし、返済が進む中で、資金にゆとりができることは珍しくありません。
そのときに返済を楽にする方法として、「繰上げ返済」というものがあります。

繰上げ返済の効果とニつの方法
住宅ローンは、契約時に月々の返済額とその返済期間を決めて融資を受けます。
しかし、返済期間の途中で給料が上がることや、臨時ボーナスが出るなどして手元の資金に余裕ができることがあります。
そのような場合には、約定額とは別にそのまとまった資金を返済に充てることができます。これを繰上げ返済といいます。
 
その効果の具体例を記します。仮に、借入額が3,000万円で返済期間を35年に設定、金利が固定で1.5%だった場合(元利均等返済)、
返済額は91,855円で、総返済額は38,579,239円になります。
 
しかし、固定収入が増額されたり、臨時収入が得られたり、あるいはコツコツと節約に励み貯蓄額にゆとりができたとして、
毎月の支払いとは別に10年後に100万円を繰上げ返済するとします。
繰上げ返済は、支払った金額がそのまま元金の返済に充てられるので、
11年目以降の利息分が当初予定よりも減額されることになります。
その結果、11年目以降の総返済額は(残債)が、26,356,842円となり、
繰上げ返済しない場合の27,556,600円に比べて、1,199,758円下がります。
 
では次に、繰上げ返済のニつの方法を見ていきましょう。
 
期間短縮型
一つ目は「期間短縮型」です。先ほどの効果事例で、総返済額が減ることがわかりました。
総返済額が減って、繰上げ返済以降も当初予定通りの月額を返済していったとしたら、
当然、それまで設定していた返済期限よりも早く払い終わることになります。
このように完済年月を早める方法を「期間短縮型」と言います。
 
返済額軽減型
一方、先ほどの事例では、元々の返済額は91,855円でした。
100万円の繰上げ返済後も返済期間を変えないとすると、総返済額が減ったのですから、毎月の返済額が減額されることになります。
今回の例では、11年目以降の返済月額は、87,856円となり、約4,000円の減額が実現できます。
このように、返済月額を減らす方法を「返済額軽減型」といいます。

繰上げ返済のメリット・デメリット
繰上げ返済のメリットは、その方法でも記したように、
 
1. 総返済額を減らせること
2. 返済期間を短縮できること
3. 毎月の返済額を減らせること

 
です。「2」を選んだ場合は、その分老後の資金準備が前倒しできるなど、将来の不安軽減につながります。
「3」は、毎月の生活資金にゆとりができるので、家計を安定させる効果があります。
 
次にデメリットを見ていきましょう。
 
デメリット1:家計を圧迫する可能性
一度繰上げ返済すると、取り消すことはできません。
ですから、繰上げ返済をする金額は、余剰分だと思っても、先々必要になる可能性をよく考えて決めましょう。
後に家計を圧迫したり、子供の進学などに必要な資金が不足したりしないよう、計画的に行うことが大切です。
 
デメリット2:繰上げ返済後の団信の適用について
団体信用生命保険(団信)は、住宅ローンの契約者が死亡または高度障害により働けなくなったときに、
住宅ローンの残債をゼロにしてくれる保険ですが、
繰上げ返済に関するリスクについては、あまり知られていません。
 
例えば、繰上げ返済する前なら、団信の実行でローン残債の2,000万円が補償されるはずが、1,000万円の繰上げ返済後に、団信が実行された場合、
ローン残債の1,000万円が補償されることになり、補償額において1,000万円の損をしている形になるのです。
これに関しては、予測不可能な部分はありますが、繰上げ返済前後と団信適用の関連については知っておくべきでしょう。
 
デメリット3:効果が低い場合がある
例えば、返済期間の終盤で、残りの金額を退職金を利用して払い切ってしまおうという場合。
住宅ローンは、借り入れた元金と利息を支払っていきますが、利息の方が金額が少ないので、
当然、元金よりも早く支払いが終わります。つまり、返済期間の終盤では、すでに元金のみの返済になっている可能性が高いので、
その時点で繰上げ返済をしても、最大のメリットである「総返済額(利息分)を減らせる」という効果が得られません。

繰上げ返済の注意点
繰上げ返済のメリット・デメリットを把握した上で、実際に繰上げ返済を行うに当たって、
どのような点に注意をすればよいでしょうか。
 
手数料について
残債を全額繰上げ返済する場合には、金融機関の手数料が発生することがありますが、一般的には手数料がかからないことが多いようです。
また、通常は繰上げ返済の回数に上限設定はないので、自分の資金状況を踏まえ、こまめに繰上げ返済をしても手数料無料ならば、利息低減には効果的です。
 
計画的に行う必要がある
例えば、勤務先の業績が堅調でボーナスが多く入ってきた、給料が増えたという事情から想定外に余剰資金ができたとします。
確かに繰上げ返済は、時期によっては一定の効果が得られる方法です。
しかしそのときこそ、ライフプランに立ち返って改めて資金計画を見直しましょう。
 
もしかしたら教育資金をプラスしておいた方がいいかもしれませんし
、臨時の生活資金として備えておく必要があるかもしれません。
ですから、現在から将来にかけての家族に必要なお金を今一度計画した上で
繰上げ返済を考えることをおすすめします。


共働き世帯のための住宅ローンとは

日本では、1990年代終盤に共働き世帯数が専業主婦世帯数を上回り、その後も年々その差が開いてきています。
妻も世帯収入の重要な稼ぎ手となっている状況では、住宅ローンの組み方も夫婦でできるだけ有利に考えたいものです。
世帯主が単独名義で借り入れる一般的な住宅ローン以外に、共働き世帯に合った住宅ローンにはどのようなものがあるのでしょうか。

ペアローン
夫婦それぞれに収入がある場合の住宅ローンの組み方の一つに「ペアローン」があります。
ペアローンは、同一の金融機関から夫婦別々に住宅ローンを組むもので、それぞれの契約内容に基づいて返済していきます。
例えば、総額で4,000万円の融資が必要な場合、夫が2500万円、妻が1,500万円を借り入れ、
それぞれの金利、借入期間といった条件に応じて毎月返済していくわけです。購入物件の所有権は双方が有します。
 
2本の住宅ローンを組むので、団体信用生命保険の加入も夫婦それぞれが行います。
万が一パートナーが亡くなった場合は、相手方の住宅ローンの返済義務はなくなり、
自分が契約した分の住宅ローンを返済していくことになります。
 
ペアローンの最大のメリットは、二人分の収入額に応じた借り入れができるので、
どちらか単独で融資を受けるよりも多くの借入金額で住宅ローンが組めるという点です。
さらにもう一つ、夫婦それぞれの住宅ローンで所得税の控除が受けられるということもメリットになります。
当然個人の条件により控除額は異なりますので、詳細は具体的な内容に応じて確認してください。
 
一方、ペアローンのデメリットとしては、2本のローン契約になるので、融資手数料、ローン保証料、
各種保険料などの諸費用がそれぞれにかかってしまうことが挙げられます。
ただし、メリットである二人分の住宅ローン控除額に照らすと、
比較的早期に相殺されることもあるので、シミュレーションしてみるといいでしょう。
 
もう一つのデメリットとしては、前述しましたが、パートナーが亡くなった場合に自分の契約分のローン返済はそのまま継続されることが挙げられます。

収入合算
「収入合算」とは、夫婦二人分の収入を合わせた額で融資が受けられる住宅ローンです。
例えば、夫の年収だけでは融資限度額が低くて希望の物件を買えないという場合、
妻の収入を加算することで融資額を増額することができます。
ただし、単純に妻の年収を足した金額が適用されるわけではなく、収入合算者(この場合妻)の年収の割合などの規定は金融機関により異なりますので、都度確認が必要です。
 
【連帯債務】
収入合算には二つの方法があり、まず一つ目が「連帯債務」です。
連帯債務は、夫・妻のいずれかを「主債務者」、もう一方を「連帯債務者」とするローン契約です。
この契約では、夫婦二人とも債務者となり、借入額全額の返済義務を負うことになります。
購入物件の所有権は双方が有します。
 
民間金融機関の住宅ローン契約では、多くの場合、団体信用生命保険への加入は主債務者しかできませんが、
「フラット35」では連帯債務者の加入も可能です。
また、夫婦とも債務者になるので、二人とも住宅ローン控除の対象になります。
 
【連帯保証】
「連帯保証」は、夫婦二人の収入を合算して融資を受けられますが、主債務者として債務を負うのはあくまでもローン契約者です。
もう一方は「連帯保証人」となり、主債務者が返済を滞納したり返済不能に陥ったりしたときに、代わりに債務を負う義務が生じます。
購入物件の所有権は主債務者のみが有します。
 
連帯保証人は契約の上で債務者ではないので、団体信用生命保険への加入はできません。また、住宅ローン控除も適用されません。

ペアローン・収入合算利用の際の注意点
ペアローン、収入合算を利用して住宅購入の融資を受ける際には、気を付けなければならないことがあります。
それは「登記」です。
夫婦それぞれが所有権を有する場合、その分の登記申請が必要になります。
借入れ負担金額に応じて不動産の共有持分が決まりますから、夫婦といえどもその点は明確にしておくことをおすすめします。
 
また、万が一、ローン返済の途中で売却という話が出た場合、共有者双方の合意がなければ売ることができません。
 
もう一つの注意点は、将来のライフプランを考えて借入れ方法を選択するということです。
主に妻の収入について、子供が生まれるなどで一定期間減収になることは可能性として大いに考えられます。
そのときに返済負担が重くのしかからないように、借入れ当初からそのような生活の変化を見越して、
自分たちに適した住宅ローンの形態を選ぶようにしましょう。

住宅ローンの借り換えについて

返済中の住宅ローンの負担を軽減させる方法の一つに、「借り換え」があります。
この「借り換え」の効果や注意点について、説明していきます。

住宅ローンの「借り換え」とは
住宅ローンの「借り換え」は、返済中の毎月のローン支払額を、今よりも少なくすることを目的としています。
具体的には、今の金利よりも低い設定で借り入れができる金融機関で、新たに住宅ローンを組み直すということです。
しかし、借り換えに際しては、一定の効果を得るためにはいくつかの条件があり、また、注意すべき点もありますから、それらを見ていきましょう。

より効果的な借り換え
「借り換え」の目的はローン返済の負担を減らすことですから、そのためにはまず金利差に注目します。
 
例えば、残りの返済期間が25年で、残債(元金)2,000万円を金利2.5%で返済していく場合、総返済額は26,917,004円になります。
これを金利1.5%で借り換えることができれば、総返済額は23,996,180円に減らすことができます。
その差は300万円近くになります。このように、金利差で生まれる返済額の減少という効果はとても魅力的ですね。
 
ではこの効果をより大きく生むためには、どのような条件が必要なのでしょうか。
 
一般的には、
1.金利差が1%以上あること
2.残りの返済金額(元金)が1,000万円以上あること
3.残りの返済期間が10年以上あること

という三つの条件を備えていることが必要だと言われています。

借り換えのメリット・デメリット、注意点
メリット
借り換えの最大のメリットは、総返済額を減らせるということです。
総返済額が減れば、毎月の返済額を減額したり、返済期間を短縮したりと、
ライフプランに応じて資金計画の再編成が行えます。
 
例えば、教育資金に不安を感じていたのなら、その部分に補填(ほてん)ができます。
また、老後の生活が心配だったのなら、早めに完済することである程度不安が和らぐでしょう。
ただし、前述のように、どれ程のメリットが出せるかは金利差にかかっています。
 
デメリット
デメリットを挙げるとすれば、「借り換え」には手数料などの諸費用が必要だという点です。
現融資契約の終了と新規融資契約の開始に際しては、それぞれ費用が発生します。
以下に借り換えにかかる諸費用を記します。
 
〈現住宅ローンの完済手続き〉
・全額繰上げ返済手数料:現在借り入れている住宅ローン残高を全額繰上げ返済する必要があり、その際に発生する手数料です。
現在融資を受けている金融機関に支払います。
 
〈新規住宅ローンの融資手続き〉
・保証料:万が一返済不能に陥ってしまったときに、残高の返済を保証会社に行ってもらうために支払う費用です。
金融機関が提携している保証会社に支払います。
 
・融資事務手数料:借り入れ先の金融機関に支払います。金額は金融機関ごとに異なるので、確認が必要です。
 
・印紙税:新たに取り交わす「金銭消費貸借契約証書」に貼付する印紙費用です。
印紙税額は、ローンの借入金額によって異なります。
 
〈不動産登記手続き〉
・抵当権抹消費用:現在借り入れている金融機関の抵当権抹消登記をする際に、登録免許税がかかります。
また、登記手続きを代行する司法書士への報酬費用も必要です。
 
・抵当権設定費用:新たに借り入れる金融機関の抵当権設定登記について、登録免許税がかかります。
こちらも司法書士に支払う費用が必要です。
 
借り換えの注意点
「借り換え」にあたって注意すべき事は、メリットからデメリットを差し引いて、いかに大きなメリットが出せるかという点です。
つまり、金利差から得られる総返済額の減額分と、発生する諸費用のマイナス分をきちんと算出して、前者が大きければ大きいほど「借り換え」の意味はあるということです。

家を買い替える強い味方「買い替えローン」

住宅ローンで購入した家を買い替える場合もあると思います。そんなときに便利な「買い替えローン」について見ていきましょう。

「住宅ローン」と「買い替えローン」の違いとは
住宅ローンとは、住宅の購入を行うために金融機関などから受ける融資のことです。
通常の住宅ローンの場合は、購入住宅の担保価値の範囲内で組むことができます。
 
今回は、家を買い替えるという場合の住宅ローンについて考えてみましょう。
 
売却する家の住宅ローンが残っているならば、その家をいくらで売却できるか、つまり「売却価格」がポイントになります。
売却価格が住宅ローン残高を上回る場合は、家を売って得た資金で住宅ローンを完済することができます。
この金額次第では、売却時にかかる仲介手数料や、新たに購入する家の頭金や諸費用に充当することも可能です。
この場合、新たに購入する家の住宅ローンの組み立ても通常の新規借入と同様に進んでいきます。
 
逆に、売却価格が住宅ローン残高を下回る場合はどうでしょうか。
この場合、住宅ローン残高と売却価格の差額分を現在の貯蓄から支払えるかどうかが焦点になります。
 
現在の貯蓄から、住宅ローンと売却価格の差額分を支払える余裕があり、新たに購入する家の頭金や諸費用を捻出できるのであれば、
通常の新規借入と同様の住宅ローンを選ぶことが可能になります。
 
住宅ローンと売却価格の差額分を現在の貯蓄から支払えない場合、買い替え物件のローンを組む際に、
この差額分も含めて多めに借りるという方法が考えられます。
その際に利用できるのが、「買い替えローン」です。
 
たとえば、新しく4,000万円の家を全額ローンで購入する場合、仮に現在の住宅ローンの残高が2,000万円残っており、その売却価格が1,500万円だったとします。
この場合、差額の500万円を新規購入する家のローン4,000万円と合わせて4,500万円のローンを組むことができるのが、「買い替えローン」になります。

「買い替えローン」のメリット、デメリット
通常の住宅ローンは、購入住宅の担保価値の範囲内での融資が基本ですが、
「買い替えローン」は、買い替え物件の担保価値の1.5倍、2倍といった水準までの融資を可能としています。
 
そのため、売却価格が住宅ローン残高を下回る場合においても、借入れが可能となり、資金面で余力が持てることが「買い替えローン」のメリットです。
また、現在組んでいる住宅ローンの金利より低金利の住宅ローンへ借り替えることができることも大きな利点でしょう。
 
それでは、「買い替えローン」のデメリットとは何でしょうか。
 
「買い替えローン」は担保価値以上の借入れを可能にするため、通常の住宅ローンとは借入額の審査基準が異なります。
返済能力に関する審査が厳しくなる傾向があり、融資額にも上限が設けられるケースが少なくありません。
 
また、「買い替えローン」を利用するには現在の住宅ローンを一括返済し、「買い替えローン」の融資実行を同日に行わなければなりません。
さらに、売却物件の抵当権の抹消手続きや購入物件の抵当権の設定、所有権の登記も同日に行う必要があります。
このように、調整や事前準備を十分に行うことが必要になるため、手続きが煩雑になるのはデメリットですね。

買い替えローンを上手に利用するポイントは?
買い替えローンは、通常の住宅ローンと比べて審査が厳しくなる傾向にあるため、審査が重要になります。
買い替えローンの審査時に、現在の住宅ローンを組んだときよりも収入や勤務先のレベルアップなどで審査に有利となるような条件を持っていると高評価を得ることができるでしょう。
 
また、世帯収入の合算など、借り入れる側の条件を変えるという提案を出すなど、工夫をすることも大切です。
買い替えローンでは、借入総額が多くなることによって、ローンの返済額が現在よりも上がってしまうことがあります。
そのため、買い替え後の返済計画に無理がないかどうかをしっかりチェックすることもポイントになります。
 
無理のない返済計画にすることで、審査上も有利になります。
将来の年収や家計負担なども考慮に入れ、返済計画が十分に練られた場合に、買い替えローンの利用価値が高まると言えるでしょう。