• 相続について

相続について

空き家を相続したらどうすればいい?
相続人が実家から独立して別の場所で暮らしているとき、両親からの相続で困る問題といえば、
両親のどちらもが亡くなってしまった場合の空き家問題です。
なんとなく「空き家のまま放置しておくのはよくないな」ということはわかっても、実際にはどうしたらいいか自分では判断がつかないものです。
空き家を相続したときの対応について解説します。

空き家のまま放置するメリット・デメリット
空き家を相続したときの最も簡単な選択肢の一つとして、その家を空き家のままにしておくということが考えられますが、
これにはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。
 
【空き家のままにしておくことのメリット】
空き家にしておくことのメリットにはまず、思い出の場所をそのまま残しておけるということがあります。
また、年に数回でも実家(地元)に帰るようなことがある場合の宿泊先・家族の集合場所としての利用も考えられます。
 
【空き家のままにしておくことのデメリット】
空き家のままおいておくことのデメリットには、家の劣化が進みやすくなってしまうことがあります。
誰も住んでいない建物は換気や水回りなどの使用をしないので、劣化が進んでしまうのです。
また、不法侵入を誘発する可能性も生じます。結果的に犯罪につながることや、火災発生も危惧されます。
このように、手入れ、管理を怠った結果、ご近所に迷惑をかけてしまうかもしれません。
事柄によっては、法的な紛争につながることさえあります。
 
さらに、空き家として持っているだけでも固定資産税がかかることはデメリットといえるでしょう。
もしも「空家等対策の推進に関する特別措置法」による「特定空家」に指定されると、助言・指導~強制対処といった措置を受けることになります。
また固定資産税の住宅用地特例の対象から除外されるので、課税額が大幅に増えるなど経済的負担が増えてしまいます。

空き家の相続時に決めるべきこと
相続するものの中に空き家があるとき、相続人はどのようなことを決めなければならないのでしょうか。
 
【空き家の利用方法をどうするか】
まず決めなければならないのは空き家の利用方法です。空き家をそのまま置いておく、売却する、賃貸をするなど、
まずはどのように使用をするのかということを決めなければなりません。
 
【経済的な割り振りをどうするか】
空き家の利用方法が決まったら、次に経済的な割り振りをどうするかを検討する必要があります。
売却した場合には、相続人間で売却代金をどうやって分けるか、賃貸や民泊をする場合には収益をどのように割り振り、
固定資産税や維持管理のための費用の支出がある場合にはどのようにして費用負担するか、などを決める必要があります。
相続人が自分一人の場合は、当然この限りではありません。
 
【名義をどうするか】
空き家の名義をどのようにするかを決定する必要があります。
所有者の名義を誰に変更するのかといったことや、固定資産税の支払い名義を誰で行うのか、
といったことを決定する必要があります。

専門家への相談について
空き家の問題は、当事者で話し合ってもうまく答えが出ない場合があります。
そのような場合には、専門家の助けを借りるのがいいでしょう。
 
基本的には、ファイナンシャルプランナー(FP)と呼ばれる専門家に相談するのがおすすめです。
遺産の分配にかかわる名義変更の問題であれば、弁護士への相談が適しています。
単に名義変更の手続き上の問題である不動産登記についてならば、司法書士に相談をすると円滑に話が進みそうです。
固定資産税の支払いをどのように行うかなど、税金にかかわることならば、基本的に
税理士に相談するのがよいでしょう。家を相続して、その後どうすればよいか困った場合には、不動産会社やFPなどの専門家に相談すると、
無駄や無用のトラブルを防ぐことにもつながります。


複数の相続人での不動産相続について
相続時に複数の相続人が存在するということは、ごく普通にあります。相続人が複数いて相続遺産が不動産の場合、金融資産のように簡単には分配できません。
ではこの場合、どのような方法で不動産を相続すればいいのでしょうか。

「法定相続」と「遺言」による相続
まずは、相続できる人=相続人とはどのような人なのかを知っておく必要があります。
 
【法定相続について】
「法定相続」とは、「法定相続人」による相続のことです。「法定相続人」は民法により定められている相続人のことで、
具体的には、配偶者、子をはじめとする血族をいいます。
配偶者は被相続人と戸籍上正式に婚姻関係にある者で、常に相続人となる権利を有します。
それ以外は血族相続人と呼ばれ、以下のように相続順位が定められています。
 
・第1順位:子(子が死亡している場合は孫)
・第2順位:父母など直系尊属(父母がいない場合は祖父母)
・第3順位:兄弟姉妹(兄弟姉妹が死亡しているときはその子)
 
第1順位がいない場合、あるいは相続放棄をした場合に第2順位が相続する権利を有します(以下同じ)。
 
法定相続には、遺産を分割する割合も定められています。これを「法定相続分」と言い、主な配分は以下のようになります。
 
1.〈配偶者+子〉の場合:配偶者1/2・子1/2(複数の場合は受け取り分を均等分割)
2.〈配偶者+直系尊属〉:配偶者2/3・直系尊属1/3(同上)
3.〈配偶者+兄弟姉妹〉:配偶3/4・兄弟姉妹1/4(同上)
 
これら法定相続についてはその名の通り、民法により定められており、相続の基本となります。
 
【遺言による相続】
被相続人が生前遺言書を作成していた場合、遺言書に記された内容を優先して相続できることになっています。
つまり、遺言により法定相続人以外の人に遺産を相続することができますし、法定相続分の範囲を変えて相続することもできます。
この遺言による相続を「指定相続」と言い、相続配分を「指定相続分」と言います。
 
ただし、指定相続には制限が設けられていて、例えば、「内縁関係の妻(戸籍上の配偶者ではない)に全ての遺産を相続する」という内容は
、その通りにできないようになっています。
これは法定相続人の相続する権利を侵害しないための規定で、兄弟姉妹以外の法定相続人には一定の割合は必ず相続できることが保証されています。
これを「遺留分」と言います。
 
相続にはこれら「法定相続」と「遺言による相続(指定相続)」があることを覚えておきましょう。

「遺産分割協議」について
遺言書がなく複数の相続人がいる場合は、「遺産分割協議」を行います。
また、遺言書があっても、一部の相続財産についてしか記載されていない場合や、分割方法が明示されていない場合なども、遺産分割協議を行います。
 
遺産分割協議には相続人全員が参加し、相続財産の割合、分割方法の取り決めをします。
そして協議内容を明確にして後のトラブルを防ぐために、「遺産分割協議書」を作成します。
このとき基本となるのが、法定相続の考え方です。
 
しかし、相続財産が不動産で、分割方法が遺言されていないとしたら、円滑に遺産分割が進まないことも大いにあり得ます。
では不動産をどのように複数の相続人で分割相続すればいいのでしょうか。
次項でその方法を見ていきます。

不動産を分割相続する方法
相続した不動産を複数の相続人で分割するには、いくつかの方法があります。
まず、不動産をそのまま残す形での分け方から見ていきましょう。
 
【代償分割】
「代償分割」とは、相続人のうち誰かが遺産である不動産を取得し、それ以外の相続人に対して相続財産以外の資産を渡すという方法です。
例えば相続人である子のうち、長男が不動産を一人で取得するが、次男には長男の資産から法定相続分に該当する現金を渡すという形で分割します。
 
【共有】
「共有」は、正しくは分割ではありません。
相続した不動産を相続人全員で共有財産として保有しましょう、ということです。
大抵は、相続分に沿った割合で持分を確定します。確定した持分で不動産登記をすることになります。
 
この方法には、特に将来的なリスクがあるので注意が必要です。
まず、共有名義者全員の同意がなければ、売却などが行えないということです。
さらに共有名義者が死亡した場合、持分の相続が発生するので、年月が経過するほどに権利関係が複雑になってしまいます。
運用するにも売却するにも簡単に事が進まない可能性が高くなるので、
最初に具体的な条件や将来についての取り決めも細かく明確にしておく必要があります。
 
共有は遺産分割を先送りにしているだけ、という見方もあります。永久に円満に共有し続けられるとは考えにくいので、
できるなら他の分割方法できちんと遺産分割をした方がいいかもしれません。
 
次に、相続不動産を残さないで遺産分割をする方法を挙げます。
 
【換価分割】
「換価分割」は、不動産を売却し、その売却で取得した金銭を分割するという方法です。
最もわかりやすく公平な分割方法と言えるかもしれません。
ただし、売却で得た譲渡所得には所得税が課されますので、その点がデメリットと言えるでしょう。
 
以上、相続した不動産を複数の相続人で分割する方法を紹介しました。
最初に記したように、金融資産と違いきれいに分割することが難しい上、
相続には相続人それぞれの考えや主張、事情が複雑に重なり合いますので、できるだけ後々のトラブルを生まない方法を選択したいものです。


実家を売却する場合、相続前後でどう違う?
親が持ち家に住んでいれば、子供には将来的に実家の相続が生じます。
事情は人それぞれ異なるとして、相続する実家を手放す場合、親の存命中=相続前に売るべきか、
相続した後で売るべきかを考える人がいるようです。
当然、節税の観点でこのような比較検討が行われるわけです。
現実的に相続前に親が住んでいる家を売却するかは置いておいて、
税制の面からこの売却タイミングによる違いを見ていきましょう。

相続時にかかる主な税金
まずは基本的なこととして、実家の相続および売却に際して課される税金について確認します。
主に以下の二つです。
 
【相続税】
相続が発生した場合に、相続遺産額に応じて相続人に対して課税されるのが「相続税」です。
相続税は、相続した「遺産総額」に対して課されます。
ただし、相続人が相続税の支払いによって困窮するようなことがないように、「控除」と「特例」という制度が設けられています。
 
ここでは「基礎控除」を説明します。基礎控除は相続人の対象条件がなく、誰でも利用できます。
基礎控除額は、
 
[3,000万円+(600万円×相続人の数)]
 
となります。親の遺産を一人の子供が相続する場合は、遺産総額が3,600万円を超えなければ、非課税になります。
 
次に特例ですが、実家を相続する場合には「小規模宅地等の特例」が受けられます。相続した土地について、
定められた要件・限度面積に応じ相続税評価額を減額するというもので、
居住用に使っていた実家の土地ならば、330平方メートルを限度に80%まで減額されます。
 
【所得税】
実家を売却する際に、売却によって得た「譲渡所得(売却益)」には所得税および住民税が課されます。
譲渡所得への課税については、対象となる住居の所有期間によって税率が変わってきます。
所有期間が5年以下の場合は「短期譲渡所得」として所得税30%・住民税9%、5年を超える場合は「長期譲渡所得」として所得税15%・住民税5%になります
(この他に「所得税額」×2.1%の復興特別所得税が課税されます。※2037年まで)。
 
ただし、不動産の譲渡所得への課税についても、「マイホーム(居住用財産)を売ったときの特例」があります。
この特例は、所有期間の長短に関係なく、譲渡所得から最高3,000万円まで控除できるというものです。

実家の売却時期による課税状況の違い
では、実家を相続する前に売却する場合と、相続した後で売却する場合とでは、それぞれどのように課税されるのでしょうか。
 
1.実家を売却後に相続(譲渡所得が出たケース)
実家を売って売却益が出た場合には、譲渡所得に対する所得税が課されることになります。
ただし、居住用財産を売ったときの特例により、3,000万円以下では非課税になります。
仮に譲渡所得が5,000万円だとすると、2,000万円分について課税されます。
長期譲渡所得が適用されるとして所得税が15%で300万円、住民税が5%で100万円、
復興特別所得税が300万円×2.1%で63,000円、合計で4,063,000円になります。
 
続いて売却して現金化された資産の相続に対して相続税が課されますが、
相続税についても前項の通り基礎控除があるので、その規定範囲内は非課税になります。
子供が一人で相続する場合で、仮に相続財産総額が5,000万円だったなら、
基礎控除分の3,600万円を引いた1,400万円が課税対象になります。
相続財産総額3,000万円以下の相続税率は15%、さらに規定の控除額50万円を差し引くと税額は160万円になります。
 
前述した、小規模宅地等の特例による80%の控除は不動産として持っている事が前提なので適用されません。
 
2.実家を売却後に相続(譲渡所得が出ないケース)
実家を売却しても譲渡所得が出なかった場合には、不動産売却に関する所得税は発生しません。
あとは、相続財産総額が相続税の基礎控除額を超えるかどうかによって課税の有無が分かれることになります。
 
3.相続後に実家を売却(譲渡所得が出たケース)
実家を不動産のまま相続する場合、土地・家屋の評価額に応じて相続税が課されます。
本ケースでも相続税の基礎控除は適用されます。
さらにこの場合は、土地面積が330平方メートル以下ならば「小規模宅地等の特例」が適用されるので、
課税される相続財産総額が80%減額になります。
上記同様1,400万円が課税対象となった場合、そこから80%分が減額されるので、
最終的に280万円に相続税がかかることになります。
相続財産総額1,000万円以下の税率は10%なので、相続税額は28万円 になります(子供一人相続の場合)。
 
続いて相続した実家を売却した場合の課税についてですが、所得税は前述の通り譲渡所得に対してかかってきます。
ただし、相続した実家を一定期間内に売却した場合には、相続税額のうち一定金額を譲渡資産の取得費に加算できる
「相続税が取得費に加算される特例」を適用することができます。
これにより譲渡所得額を減額することができるわけです。
 
また、親と同居していて相続後も住み続けていたならば、居住用財産を売ったときの特例が適用されます。
 
4.相続後に実家を売却(譲渡所得が出ないケース)
状況に応じ相続税の課税があるかどうかだけになります。
相続税率、規定の控除額については、国税庁ホームページなどでご確認ください。

基本知識と個々の事情で正しい判断を
ここまで、子供が実家を相続する、実家を売却するという二つの行為について、時期の違いで課される税金がどのように変わるのかを見てきました。
主に相続税と所得税について、税制上適用される控除と特例の基本的な規定はご理解いただけたかと思います。
しかし、ここでの前提は、相続人が子供一人、親が5年を超えて実家に住んでいるなど、便宜的に設定した条件ですので、
実際は相続前後どちらに売却した方が節税につながるかは、一概に判断がつきません。
 
生前に実家を売却するならば、親の住居はどうするか、その他個々の事情により他の税制上の特例も受けられるかなど、
両者を正しく比較して結論を出すのは難しい面があります。
相続人が複数いる場合はさらに複雑になりますので、現実的な話になった場合は税理士などの専門家に相談するのも一つの方法です。
ただ、いずれにしても親にとっては大切な住まいですから、その意向を一番に考えるべきかもしれません。


不動産のみを相続した場合の相続税について
遺産相続が発生した際に、相続財産が不動産だけということがあります。そのような場合に、
相続税の支払いはどのようにすればよいのでしょうか。
一般的に実家を相続するケースはありますので、事前に考えて準備しておくといざというときに困りません。

相続税についての基礎知識
遺産を相続するとき、相続人にとって相続税がどのくらいかかるのかは、とても重要な事柄となります。
まずは相続税の基本的な仕組みを知っておく必要があります。
相続税は、遺産総額が設定された金額を超えなければ課税されない、という特徴があります。
これを相続税の「基礎控除」と言います。
基礎控除額は、「3000万円+(600万円×法定相続人の数)」という計算式で算出されます。
 
「法定相続人」とは、亡くなった被相続人の遺産を相続できる人のことで、民法によりその範囲が決められています。
法定相続人が確定すれば、基礎控除額が計算できるようになります。
 
例えば、「A.子供1人だけが相続する」というケースと「B.配偶者と子供2人の合計3名が相続する」というケースで考えるならば、
それぞれの基礎控除額は
 
A.3,000万円+(600万円×1)=3,600万円
B.3,000万円+(600万円×3)=4,800万円
 
となります。
 
この場合において、もし相続財産が4,000万円の不動産であるならば、それぞれ基礎控除額を差し引くと、
Aのケースでは400万円の取得分に対して相続税が発生することになります。
一方、Bのケースでは基礎控除額の方が相続財産の額より大きいため、相続税は発生しません。
 
実際には基礎控除だけでなく、「配偶者控除」や「未成年者控除」などの控除や特例などが適用されるため、個々の状況による違いは出てきますが、
以上が相続税の課税についての大きなポイントです。

不動産を相続したときの納税について
相続する遺産が高額であればあるほど、基礎控除額を差し引いた取得額が高くなるため、多額の相続税を納税しなければならなくなります。
不動産は高額である場合が多いため、その相続税も多額になることが考えられます。
 
加えて、相続税の支払いは原則として現金の一括払いとされています。
つまり、不動産のみを相続するということは、現金が手元に入ってくるどころか、相続税のために手持ちの現金が減るということも考えられるわけです。
手持ちの現金が足りなければ、相続税が支払えないという事態に陥ることも想定されます。
支払えないからといってそのまま納期限を過ぎてしまうと、無申告加算税や延滞税が追加で課されてしまいます。
さらに悪質な納税逃れには、より重い重加算税が課されることになり、最悪の場合は滞納処分として財産が差し押さえられる可能性もあります。
 
納付額が用意できずに、相続税を一括で支払うことができない場合の救済措置として、分割納付する「延納」という手続きをとることや、
不動産などの現物を現金の代わりに納める「物納」という方法をとることも可能ではあります。
ただし、延納には利息(利子税)が付くというデメリットがありますし、
物納については複数の要件があり、これらを満たしても不適格だと判断されれば認められないという厳しさがあります。
 
いずれにしても、相続税は必ず納付しなければなりませんから、相続を知ったならば迅速に納税額を確認し、資金の準備を進めるべきでしょう。
自身でわからない場合は、相続税案件を多く扱っている税理士に相談するのもいいでしょう。

相続税を支払うための資金準備方法
相続税の申告・納税は、「相続が発生したことを知ってから10カ月以内に行わなければならない」と相続税法で定められています。
相続税が多額に上った場合は、納付期限内にその納税額を用意することが難しいということもあり得ます。
未納によるペナルティーを受けないために、いくつかの回避方法を知っておきましょう。
 
【相続不動産の売却代金で納付する】
手持ちの現金で相続税を支払うことができない場合には、相続した不動産を売却し、その代金を納付に充てるという方法があります。
ただし、相続税額を上回る価格でうまく売却できるとは限りません。
加えて不動産の売却には時間がかかることも多いため、期限内に現金にできないことも考えられます。
 
【相続不動産を担保に借入を行う】
相続財産である不動産を手放したくないという場合や、うまく売却できない場合などには、その相続財産を担保にして金融機関から納税資金を借り入れるという方法があります。
金融機関では、金融商品として相続税の支払い支援を目的としたローンが用意されています。
相続税の申告のために依頼した税理士への報酬や、不動産登記費用なども使途に含めて借り入れできるものもあります。
延納の利子税と比べて、ローン利息の方が利率が低い場合があるので、手持ちの現金が少ない場合には利用を検討してみてもいいでしょう。
 
【生命保険を利用する】
相続が発生する前の段階から、相続税がかかることをすでに把握している場合には、相続人を受取人とする被相続人の生命保険を生前からかけておくことも有効です。
受取人が死亡保険金を直接受け取る場合には、その死亡保険金は相続財産とは判断されないというメリットがあります。
そのため、相続人たちが全員で遺産の分割方法を協議する「遺産分割協議」や、
遺言により持分が認められなかった法定相続人が自分の持分を主張する「遺留分減殺請求」の対象にもなりませんので、
受取人は確実に相続税の資金として死亡保険金を受け取ることができます。
 
ただし、相続財産ではないといっても、税法上は「みなし相続財産」として相続税が課されるという点には注意が必要です。
みなし相続財産となる場合には、受け取った死亡保険金から「500万円×法定相続人の数」で計算される非課税枠を差し引き、
残った金額に相続税が課されることになります。
他にも、被相続人を被保険者としていても、保険料を支払っていたのが別の人である場合には、相続税の課税対象にはなりません。
しかし、保険金の受取人が保険料を支払っていた場合は所得税、受取人以外の第三者が支払っていた場合は贈与税の課税対象になるので、
注意が必要です。

不動産の購入が相続税対策に有効な理由
近年の税制改正により課税の対象となるケースが増えたといわれる相続税は、
資産を保有している人にとって重大な関心事になっています。
不動産投資はそのような相続税対策は大きなメリットの一つでもあります。
以下では、不動産投資がどのように節税に役立つのか、その仕組みを紹介します。

相続税対策の重要性
【相続税の改正で対象者が増加】
相続税の計算をする際、遺産額から基礎控除額を差し引くことができます。
この基礎控除額は、従来「5,000万円+法定相続人の数×1,000万円」でしたが、
2015年1月から「3,000万円+法定相続人の数× 600万円」と引き下げられました。
 
つまり、その分相続税の課税対象となる人が多くなります。
実際に、2014年までの課税割合は4%台で推移していましたが、2015年は8.0%となりました。
 
【早めの対策で節税が可能に】
相続税は早めに対策を始めるほど節税の幅が広がります。
たとえば、増与税の暦年課税では年110万円の非課税枠が利用できます。
つまり、10年かけて1,100万円の資産を無税で生前贈与し、相続税の対象を減らすことができるのです。
これは受贈者一人あたりの金額ですので、もし、二人、三人と贈与すれば、その額は2倍、3倍となります。
節税の仕組
【不動産に変えることで評価額が下がる】
相続税対策の基本は、対象となる資産の評価を下げることです。
相続税の計算は、現預金、有価証券、不動産などの遺産を集計するところから始まります。
その際に、それぞれの資産をいくらの金額と考えるかが評価での問題となります。
 
現預金は額面がそのまま評価額となるので節税の余地がありませんが、
有価証券や不動産では評価方法を勘案して節税する余地が生まれます。
 
【賃貸経営にするメリット】
まず、資産を現預金として保有しているのに比べ、これを不動産に変えて保有するだけで、相続税の評価額は下がります。相続税法上、
土地は路線価、建物は固定資産税をもとに評価されるのが基本ですが、それらの価格は実勢価格より低いからです。
 
また、保有している不動産を賃貸することにより、さらに評価額を下げることができます。
土地では、自用地という扱いから貸家建付地という扱いになり、
評価額が約80%に減額されます。建物では、貸家という扱いになり、固定資産税評価額から借家権割合(通常30%)が控除されることで約70%に減額されます。
このため、賃貸経営をすること自体が節税対策になるのです。

小規模宅地等の特例
【小規模宅地等の特例とは何か】
上記のような節税効果のほかにも、「小規模宅地等の特例」を適用することにより、さらなるメリットを享受することができます。
小規模宅地等の特例というのは、相続や遺贈により取得した財産で、相続開始の直前において被相続人の事業や居住の用に供されていた宅地等のうち、
一定の面積について相続税の課税価格を減額する制度です。
 
たとえば、居住用の宅地であれば330平方メートルまで80%減額、事業用の宅地であれば400平方メートルまで80%減額となります。
不動産経営の場合は、貸付事業用の宅地として、200平方メートルまで50%減額となります。
 
【要件は?】
被相続人の貸付事業の用に供されていた宅地の場合、「事業承継要件」として、
その宅地を利用した貸付事業が相続税の申告期限までに引き継ぎ行われていること、
また「保有継続要件」として、その宅地を相続税の申告期限まで有していることなどが必要とされます。
 
なお、相続開始前3年以内に贈与により取得した宅地、相続時精算課税を利用して贈与により取得した宅地については、
小規模宅地等の特例との併用ができないため、注意が必要です。
実際に特例の適用を受ける際には、相続税の申告書に、
小規模宅地等に係る計算の明細書や遺産分割協議書の写しなどを添付して申告手続をする必要があります。
 
相続税対策では、そのほかにもさまざまな条件を考慮する必要がありますので、
早めに税理士などの専門家に相談することが得策といえるでしょう。


相続した不動産の名義変更について
不動産を相続すると所有者が変わるので、「名義変更(相続登記)」を行う必要が生じます。
ところが、相続した不動産の名義変更をしないでそのまま過ごしてしまっている人は、意外と多いようです。
では、不動産の名義変更を長期間行わないと、どのような問題が生じるのでしょうか。
名義変更登記手続きの方法なども合わせて確認しましよう。

不動産の名義変更を長期間放置するとどうなるか
そもそも、なぜ不動産の名義変更が行われずに放置されるということが起きるのでしょうか。理由は大きく二つあります。
まず一つ目は、名義を変えるための不動産登記手続きは必ずしなければならないという決まりがない、つまり義務がないためです。
もちろん罰則などもありません。二つ目は、期限もないということです。
言い換えれば、基本的に誰からも「名義変更してください」という連絡も通知もありませんし、
「手続きの期限は○月○日です」ということも言われません。
従って認識していても忘れてしまう、名義変更すべき案件自体を知らないということで放置されてしまうのです。
 
では、不動産の名義人が死亡したことにより、本来は手続きを行うべき相続登記をせずに長期間放置すると、
どのような不都合が生じるのでしょうか。
 
まず相続登記をするためには、いくつもの書類が必要になります。例えば相続人全員の戸籍謄本や印鑑証明書です。
親名義の不動産を子供一人が相続する場合なら、相続人である子供は自分の分の戸籍謄本などを取得すればいいので、容易に準備ができます。
 
しかし、これがもしも不動産の名義が祖父・あるいは曽祖父のまま変更されていなかったとしたら、どうなるでしょう。
一代またはもう一代遡って、相続人である可能性のある人を調べなくてはなりません。
そして相続人が判明したら、全員分の必要書類を集めることになりますが、近隣に居住しているとは限りません。
遠方に住んでいる面識のない人たちに、事情を説明した上で公的文書などを取得して送ってもらうことは簡単な作業ではありません。
 
また、遺産の分配は必ずしも法定相続分通りに行われるとは限りません。
遺言により分配が変わっている場合や相続人同士の協議により変更した場合には、
相続登記の際に遺言書、遺産分割協議書の提出も必要になります。
過去に遡ってこれら書類がない場合には、現在の相続人の地位にある人全員の合意のもと、
改めて遺産分割協議書を作成する必要があります(全員の署名・捺印要)。
 
このように相続した不動産の名義を変えずに放置すると、所有権を有する人がもはやわからず、
正確な状況を把握して正しい形に登記するのに大変な労力が必要になってしまいます。
次代に迷惑をかけないためにも、相続登記は早めに進めた方がいいでしょう。

相続不動産の名義変更方法
相続不動産の名義変更の手続きに関しては、自分で行うことも可能です。自分で行えば、コストを抑えることができます。
しかし、状況によっては専門家に依頼した方が良いケースもあります。
この場合の専門家とは、司法書士です。司法書士に依頼すべき場合とは、主に以下のようなときです。
 
1.長期間登記しないで物件が放置されていたため、権利関係が複雑化している
2.遺産の分割でもめる要因がある
3.公的な手続きに不慣れである
 
「1」の場合は、確認しなければならない内容や確認先が多岐に渡ることがしばしばで、そろえなければならない書類も相当数に上ります。
「2」は遺産の分配について、複数相続人の間で意見が分かれることによる難しさです。
ただし、司法書士は登記に関する専門家なので、相続人間の紛争などということになると相談先は弁護士になります。
 
一方、相続でもめることがないケースや権利関係がすっきりしているケースでは、自分で名義変更の手続きをした方がコストを抑えられます。
基本的には、以下の必要書類を用意して相続登記を申請すればいいのです。
 
≪必要書類≫
・登記申請書
・対象不動産の登記事項証明書
・被相続人の住民票の除票(本籍の記載要)
・被相続人の死亡時から出生時までの戸籍謄本一式
・相続人全員の戸籍謄本
・遺産分割協議書もしくは遺言(相続人が一人の場合は不要)
・相続人全員の印鑑証明書
・対象物件を取得する相続人の住民票
・対象物件の固定資産評価証明書
 
上記書類を法務局に提出し、申請を行います。申請に際しては登録免許税を支払う必要があります。
税額は不動産の評価額により異なります。
また、納税額により収入印紙による納付、現金納付後の領収証書の貼付など、方法も違ってきます。

不動産の名義変更にかかる費用
不動産の名義変更をする際には、いくつか費用がかかります。まず必要になるのが「登録免許税」です。
不動産の所有権登記などを行う場合に納付する国税で、一般的には「登記料」などと呼ばれることもあります。
登録免許税の税額は、不動産の固定資産税評価額に一定の税率を掛けて算出されます。
 
この他、必要な書類を取得するための費用が必要になります。
多くは役所で取得することになりますが、各自治体により費用は異なります。
おおむねの目安としては、例えば、戸籍謄本、住民票、登記簿謄本(全部事項証明書)などは一通500円前後を見込んでおけばいいでしょう。
多くの書類が必要になるため、自分ですべてを取得するのは大きな労力となるかもしれません。
 
時間や労力に余裕がない場合、専門家である司法書士に依頼することになります。
相続案件の内容や事務所によって、費用は変わってきます。
金額にはかなり幅があるので、必要に応じ確認してください。